2012年08月31日

鉱工業生産12年7月~生産は下降局面入りの可能性

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

文字サイズ

■見出し

・市場予想を大きく下回り、2ヵ月ぶりの低下
・鉱工業生産は下降局面入りの可能性

■introduction

経済産業省が8月31日に公表した鉱工業指数によると、12年7月の鉱工業生産指数は前月比▲1.2%と2ヵ月ぶりの低下となり、先月時点の予測指数の伸び(前月比4.5%)、事前の市場予想(QUICK集計:前月比1.7%、当社予想は同1.9%)をともに大きく下回った。
7月の生産を業種別に見ると、情報通信機械は前月比10.6%の高い伸びとなったものの、先月時点の生産計画では前月比19.3%の大幅増となっていた電子部品・デバイスが前月比▲6.5%と大きく落ち込んだほか、輸出の低迷を受けて一般機械も前月比▲3.6%となった。また、エコカー補助金再開に伴う国内販売の好調を受けて高い伸びを続けてきた輸送機械は、5月の前月比▲11.1%、6月の同▲4.0%に続き、7月も同▲0.2%と小幅ながら低下した。
製造工業生産予測指数は、12年8月が前月比0.1%、9月が同▲3.3%、生産計画の修正状況を示す実現率(7月)、予測修正率(8月)はそれぞれ▲3.5%、▲2.9%と大幅なマイナスとなった。海外経済の減速を受けて輸出がここにきて停滞色を強めていることが生産計画の大幅な下方修正につながっていると考えられる。
業種別には、5月からの3ヵ月で約15%の減産となった輸送機械は8月が前月比▲4.4%、9月が同▲13.0%と減産幅がさらに拡大する計画となっており、当面は生産の足を大きく引っ張ることになる可能性が高い。輸送機械の5月以降の減産や先行きの生産計画は、エコカー補助金終了後の自動車販売の落ち込みを見越したものと考えられるが、反動減の影響が想定を上回ることにより、さらなる減産を余儀なくされるリスクもあるだろう。
また、8月の予測指数がかろうじて前月比でプラスとなったのは、一般機械、鉄鋼がそれぞれ前月比2.9%、1.9%と比較的高い伸びとなっているためであるが、7月の実現率はそれぞれ▲3.5%、▲1.7%と大幅なマイナスとなっており、両業種の8月の実績は計画を大きく下回る恐れがある。8月の予測指数は前月比でプラスとなっているが、鉱工業生産の実績値はマイナスとなる可能性のほうが高いだろう。
12年7月の生産指数を8月、9月の予測指数で先延ばしすると、12年7-9月期は前期比▲3.0%の低下となる。先月時点では7-9月期の生産は前期比で2%台のプラスになると見込んでいたが、一転してはっきりとしたマイナスとなる公算が大きくなった。経済産業省は、生産の基調判断を「横ばい傾向」で据え置いたが、すでに下降局面入りしている可能性も否定できないだろう。

(2012年08月31日「経済・金融フラッシュ」)

Xでシェアする Facebookでシェアする

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【鉱工業生産12年7月~生産は下降局面入りの可能性】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

鉱工業生産12年7月~生産は下降局面入りの可能性のレポート Topへ