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コンビニは若者からシニアのものへ?~少子高齢化は「脅威」ではなく事業成長の「機会」にも

生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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先日、若者の消費実態をレポートしたのだがi 、その中で、若い男性のコンビニ利用が減っていることが印象的だった。コンビニは昔から、定価販売をあまり気にせず、それよりも深夜でも買い物ができる利便性を重視する若い男性が主要顧客という印象があった。しかし、若年男性はコンビニからディスカウントストアや量販専門店、インターネット通販など、より低価格を提供する店舗へ流れていたii 。今の若者は様々なところで消費をしない、節約志向が強いなどといわれているが、なるほどその通りであった。
若年男性が離れていったコンビニだが、コンビニ全体の売上高は近年上昇を続けているiii 。その利用者の実態を把握するためにコンビニ関連のデータを探してみた。コンビニ全体としてはデータが見当たらなかったが、売上高で最大シェア37%を占めるセブン-イレブンで興味深いデータをみつけた。
セブン-イレブンの来店客の構成は若年層から高年齢層へとうつっている(図1)。1999年では20歳代以下の割合が半数を超えていたが、2011年には3割にまで減っている(▲20%pt)。一方で50歳以上の高年齢層は倍増して3割に達し(+14%pt)、40歳代とあわせると半数近くにおよんでいる。周知の通り、日本では少子高齢化が進行しているが、この期間の20歳代以下の人口が総人口に占める割合の変化は▲7%pt、50歳以上は+6%ptである(図1下)。つまり、セブン-イレブンの来店客構成は、人口構成で見られる変化よりも大きく高年齢層へとシフトしている。なお、この間、セブン-イレブンの売上高は上昇し続けており、さらにここ1~2年は客単価も上がっているiv。
最近、コンビニ各社で惣菜や生鮮食品、PB商品を充実させたり、宅配サービスを開始するなどして、高齢者や主婦などの取り込みがすすめられているのは知っていた。しかし、未婚化・晩婚化で独身者が増えていく中では、やはりコンビニの主要客は依然として20~30代の比較的若い層という印象があり、50歳代以上の利用がここまで多いとは思っていなかった。
なお、同様の傾向は業界二番手のローソンでもみられ、生鮮食品を強化した店舗では女性やシニア比率が高まり、客単価も上がっているv。
コンビニ業界では少子高齢化の波や若年層のコンビニ離れを比較的早い段階でとらえ、事業転換を試みた結果が好業績にあらわれているということだろう。
少子高齢化の進行は、特に若年層を主要顧客としていた業界に深刻な影響を与える。しかし、今後増加していく高年齢層を新たに取り込んでいくと考えると、事業成長の大きな機会ととらえることができる。日本の人口動態の変化を脅威でなく機会として成長する企業が少しでも増え、低迷する日本経済が活性化することを期待したい。
(2012年08月27日「研究員の眼」)

03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
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