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少子化でも拡大?-子どもの高等教育マーケット

生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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日本では夏から秋にかけて出産が増える傾向がある1。そういえば夏になると、街中でおなかの大きな女性をよく見かけるような気もするが、それは筆者も真夏に出産を経験しているからだろう。そんな錯覚めいた印象に加えて、休日になると子どもを連れて、やはり子どもがたくさんいる公園や娯楽施設へと出かけていくため、子どもを目にする機会がとても多く、本当に少子化?という気分になる。しかし、日本では確実に少子化が進行している。
厚生労働省によると2011年の合計特殊出生率は1.39で横ばい、出生数は過去最少であった2 。出生率が変わらないにも関わらず、出生数が減少した理由は、母親の多くを占める現在の20代~30代前半の世代は、第二次ベビーブーム以降、少子化が進行した世代であり、母親自体の人口が減少しているためである。
子どもの数が減少している一方、大学や短大の進学者数は、進学率の上昇によって一昔前より増えている。1980年と2011年を比べると、18歳人口が8割弱に減少しているにも関わらず、大学・短大進学者数は1.2倍に増えている(図1)。人口の多寡に影響を受けやすい多くの産業では、少子高齢化による人口減少により、すでにマーケット規模が縮小しはじめているが、大学をはじめとした高等教育マーケットでは、現在のところ大きな影響はみられないようだ。
昨今の日本の経済状況により、家計の教育費負担は厳しい状況が続くだろう。しかし、親は最後まで子どもの教育費は削らない。また、6ポケット、7ポケットといわれるように、少子化で絞られた子どもに対して祖父母や未婚のおじやおばが援助する構造もある。少子高齢・人口減少社会であっても、子どもの高等教育マーケットはまだ余力がある。一方で、より「質」が求められ、「付加価値」にも注目が集まるマーケットであり、人気が一極集中しやすい。高等教育マーケットで生き残っていくためには、企業のマーケティング活動で行われる以上の戦略と実行力を意識すべきだろう。
※ 本稿はBUAISO No.51(2012年8月発行) プレパラート「少子化と子どもの高等教育マーケット」を加筆修正したものです。
1 厚生労働省「人口動態統計月報」
2 厚生労働省「平成23年人口動態統計月報年計(概数)の概況」
3 株式会社日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査」「家計における教育費負担の実態調査」
4 Becker, Gary S. (1960). “An Economic Analysis of Fertility”, in pp. 209-40 Demographic and Economic Change in Developed Countries, by National Bureau of Economic Research. Princeton, Princeton University Press.
5 Becker, Gary S. (1981). “A Treatise on the Family”. Cambridge, MA. Harvard University Press.
(2012年08月20日「研究員の眼」)

03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
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