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私は、正直言って「暇人(ヒマジン)」である。国語辞典には「暇」とは『今しなければならない仕事などが無くて、自分の好きな事が出来るのんびりした状態』とある。このような「暇人」は会社では「窓際族」と呼ばれるが、私の場合はなぜか通路側に位置している。
『自分の好きな事が出来るのんびりした状態』にある「暇人」にもそれなりに考えることがある。私は最近、洋服の「左前」と「右前」について興味を持った。ご存知の通り、男性の上着などは「右前」といってボタンは右側についている。女性の場合は逆に「左前」になっている。その理由を調べてみると、洋服は起源である中世ヨーロッパでは貴族階級が着用し、女性の場合はメイドが着せたらしい。その際に、右利きのメイドは「左前」の方が服を着せやすかったからだそうだ。
ちなみに和服の場合は男女ともに「右前」になっており、これは利き腕の右手を懐に出し入れしやすいようにとのことである。しかし、日本では死者が着る“死装束”は「左前」になっており、そこから派生して商売などがうまくいかなることを『左前になる』という。“死装束”は他者に着せてもらうために「左前」だとすると、西洋起源の女性の洋服と符合する。つまり冥途への服装とメイドによる服装はいずれも「左前」ということになる。
このように「暇人」は暇に任せてつまらないことを考えるのだ。しかし、企業で働く多くの人はなかなかその余裕がない。ビジネスパーソンとは、忙しい“ビジー”な人という意味からもわかる。しかし、そんな人こそ少しばかり「暇」があると新たな発想も沸いてこよう。これまで「当たり前」と思っていたことを「何故だろう」と考えることで、新たなビジネスチャンスが生まれるかもしれない。
現在では洋服をメイドに着せてもらう女性はまれだろう。であれば女性用の洋服も右利きの人が着やすいように「右前」に作ってよいのではないか。他者に着せてもらうという点では、介護服やベビー服を「左前」に作ることも考えられる。既成概念にとらわれず発想するなら、新たな時代の潮流も見えてきて、様々な新しい商品開発が可能になるだろう。
本物の「暇人(ヒマジン)」とは、実は「想像性(イマジン)」と「独創性(オリジン)」を有する人のことだ。ビジネスパーソンが「当たり前」の中で見失っているものを、少しの「暇」を活用して再発見し、豊かな発想を広げ、それを仕事にも役立たせたい。「暇」はつぶすものではなく、活かすものだ。私も本物の「暇人」を目指したいと思う。そうでないと会社から本物の「暇」をもらうことになりそうだ。
(2012年07月02日「研究員の眼」)
土堤内 昭雄
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