2012年03月22日

貿易統計12年2月~貿易収支は原数値では5ヵ月ぶりの黒字だが、季節調整値では赤字が継続

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・貿易収支 (季節調整値)は12ヵ月連続の赤字
・米国向け輸出の回復基調が鮮明に

■introduction

財務省が3月22日に公表した貿易統計によると、12年2月の貿易収支は329億円と5ヵ月ぶりの黒字となり、事前の市場予想(QUICK集計:▲1,200億円、当社予想は▲1,497億円)を上回る結果となった。輸入は前年比9.2%(1月:同9.5%)と引き続き高い伸びとなったが、輸出の減少幅が1月の前年比▲9.2%から同▲2.7%へと大きく縮小した。
貿易収支が原数値で黒字に転換したのは、1月とは逆に2月は貿易収支が改善しやすいという季節性があることが影響している。2月の貿易収支を季節調整値で見ると、▲3,132億円と12ヵ月連続の赤字となった。1月の▲4,943億円からは縮小したものの基調としては依然として赤字が続いている。また、1月は中国の旧正月が輸出の下押し要因となったが、2月はその反動で輸出が押し上げられている面があることも割り引いてみる必要がある。
1月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比14.8%(1月:同0.1%)、EU向けが前年比▲11.4%(1月:同▲9.8%)、アジア向けが前年比▲7.9%(1月:同▲14.9%)となった。季節調整値(当研究所による試算値)では、米国向けが前月比7.7%、EU向けが同▲0.5%、アジア向けが同11.6%、全体では同4.4%となった。アジア向けの高い伸びは1月が旧正月の影響で前月比▲4.7%と落ちこんだ反動も含まれており、実態として輸出が大きく回復しているわけではない。輸出全体としては、EU向けの低迷を米国向けの好調がカバーする形でほぼ横ばい圏の動きが続いていると判断されるが、先行きについては円高修正の影響が顕在化することにより持ち直しに向かうことが予想される。
過去のデータを用いて貿易収支の季節性を見ると、3月は2月と同様に貿易収支が改善しやすい月となっている。このため、原数値の貿易収支は3月も黒字になる可能性があるが、貿易収支の基調を判断するためには季節調整値を用いることが適切である。
先行きについては輸出が持ち直しに向かう一方、原油価格の上昇を主因として輸入金額が高止まりするため、季節調整値でみた貿易収支はしばらく赤字が続くことが予想される。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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