- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 中国経済 >
- 中国経済の見通し:注目される4つの視点と今後の行方
2012年02月24日
- 中国の経済成長率は2011年に9.2%増と前年に比べて1.2ポイント減速した。また、2011年は期を追う毎に成長率が鈍化し、10-12月期は前年同期比8.9%増と、2年半ぶりに9%を下回るなど、中国経済は高位ながらも緩やかな減速過程を辿っている。
- 第一の注目点は欧州危機の輸出への影響である。当研究所の試算では、欧州(ユーロ圏)の2012年の成長率がほぼゼロに落ち込んでも中国の成長率に与える影響は-0.6ポイントに留まるが、欧州危機が深刻化し米国にも波及すると、影響は-2ポイント程度に拡大するとみられる。
- 第二の注目点は住宅バブル退治の行方である。中国政府の住宅価格抑制スタンスは予想より堅固で、バブル化した価格を「合理的なものに戻す」としているため、この「値幅調整」にメドが立つまでは、金融緩和の本格化や大型の財政出動は考えづらい。
- 第三の注目点は再浮上したインフレ懸念の行方である。中東情勢の緊張や日米欧の金融緩和を背景に、原油価格が高騰し、その他の商品にも波及し始めている。今後の消費者物価は、昨年後半の下ぶれの影響が残る当面は低下トレンドが続くとみられるものの、景気が底打ちする今年冬以降には再び上昇トレンドになる可能性が高いと予想している。
- 第四の注目点は今後の財政出動の時期である。欧州危機や住宅価格下落で更なる減速のリスクはあるものの、今のところ雇用情勢は安定しているため、現在は景気刺激よりも住宅バブルや地方政府債務の調整に重点があると思われる。但し、今年秋に新指導部がスタートする中国では、その前に調整を完了すると思われるため、それ以降は財政出動が期待できる。
- 以上から、2012年の経済成長率は8.7%、2013年は9.2%と予想する。リスクシナリオとしては欧州危機の深刻化を挙げているが、その場合は経済政策を景気刺激型に転換するとみていることから、リスクシナリオでも中国の経済成長率は8%を割れる程度と予想する。
(2012年02月24日「Weekly エコノミスト・レター」)
このレポートの関連カテゴリ
関連レポート
三尾 幸吉郎
研究・専門分野
三尾 幸吉郎のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2024/07/30 | 図表でみる世界の人口ピラミッド | 三尾 幸吉郎 | 基礎研レター |
2024/04/05 | 不動産バブルの日中比較と中国経済の展望 | 三尾 幸吉郎 | 基礎研マンスリー |
2024/03/11 | Comparison of Real Estate Bubbles in China and Japan, and Prospects for the Chinese Economy | 三尾 幸吉郎 | 基礎研レポート |
2024/02/22 | 米中対立下の中国リスク-事業内容によるブラック、ホワイト、グレー3分類とそれぞれの対策 | 三尾 幸吉郎 | 研究員の眼 |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年10月25日
金融システム、特に保険と年金基金のリスクと脆弱性に対する助言等の公表(欧州 2024秋)-EIOPA等の合同報告書の紹介 -
2024年10月25日
米労働市場の緩やかな減速が継続-景気が堅調を維持する中、失業率の大幅上昇は回避へ -
2024年10月25日
副業・兼業で広がるキャリア戦略~会社視点の働き方改革から生き方改革へ~ -
2024年10月24日
24年9月末時点の経過措置適用企業の進捗状況~経過措置の適用は2025年3月から順次終了~ -
2024年10月23日
円安再燃、1ドル160円に逆戻りするリスクは?~マーケット・カルテ11月号
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
【中国経済の見通し:注目される4つの視点と今後の行方】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
中国経済の見通し:注目される4つの視点と今後の行方のレポート Topへ