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リバース・モーゲージで老後の生活をまかなえるか―公正な貸出額試算から見えた制度の可能性と限界―
金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任 高岡 和佳子
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■見出し
1――はじめに
2――分析・評価方法
3――評価結果
4――まとめ
■introduction
リバース・モーゲージ とは住宅用不動産を担保とする高齢者向けの融資のことである。その最大の特徴は、元本の返済が契約者の死亡時に住宅用不動産の引渡(または売却等)により一括して行われる点にある。資産価値のある住宅用不動産を持つ一方、年金や預貯金だけでは十分な生活資金を確保できない高齢者にとっては、これを活用することで自宅に住み続けながら、生活資金などの融資を受けることが可能となる。
一言でリバース・モーゲージと言っても、契約時に全額一括で貸出が実行されるタイプ(以下、一括タイプ)や契約者の要請に応じて随時貸出が実行されるタイプ(以下、随時タイプ)、定期的に一定額の貸出が実行されるタイプ(以下、定期タイプ)など様々な貸出方法が考えられる。加えて、貸出金利、利息の支払方法、貸出主体等も様々でその形態は多岐にわたる。一方、貸付上限額が担保物権評価額に対し一定の割合(以下、掛け目)を乗じた額となる点は共通である。この掛け目を決めるのに重要な役割を果たすのは、借入時点から返済時点間に発生する利息とリバース・モーゲージに内包されるリスク(不確実性)であり、このリスクが低いほど掛け目は大きくなる。なお、掛け目に影響を与える主なリスクを具体的に挙げると、契約時から契約終了時までに住宅用不動産の価格が下落するリスク、同じく契約期間中に金利が上昇するリスク、契約終了時が契約者の死亡時であることから契約終了時自体がわからないリスクである。
随時タイプや定期タイプは、一般に貸付上限に達した段階で融資の実行が終了するため、貸付上限は契約時に確定せず、金利や不動産価格に応じ変化する。つまり、最終的な貸出総額は契約時には確定しない。契約後の市場動向に応じて貸出総額を修正できることから、一括タイプよりリスクに曝される期間は短くなり、掛け目は大きく設定できるはずである。ただし、随時タイプは、契約と同時に全額要請することもできるため、一括タイプより掛け目が大きくはならない。
本稿では価格付け理論の手法を用いて、公正な掛け目及びその結果として公正な貸出限度を試算し、貸出方法による掛け目がどの程度相違するのか、その結果として借り入れ可能な額を増やすことが可能か検討することを主目的とする。上述の理由から随時タイプは考慮せず、一括タイプと定期タイプを評価対象とする。なお、期間が短いほどリスクが減少するのは貸出主体が負うリスクであって、リスク自体が減少するわけではない点に注意が必要である。貸出主体が負うリスクが減少した分、金利や不動産価格が変化した結果、契約時の期待よりも早く貸付限度に達してしまうリスクを契約者が負うことになる。そこで、本稿では契約者が負うリスクについても参考程度ではあるが定量的に確認したい。
(2011年11月28日「ジェロントロジーレポート」)
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03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
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