- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 暮らし >
- 消費者行動 >
- おしゃれママ市場の拡大とその背景
コラム
2011年10月24日
ひと昔前は、小さな子供がいる母親がおしゃれをしていると世の中は批判的だったように思うが、最近はずい分、変わってきたのではないだろうか。出産後に美しく復帰する女性芸能人や有名人も増え、ママでもキレイを推奨、むしろキレイを保つことがやや義務的な風潮も伺える。
15年ほど前の朝の情報番組で、都内を中心に子育て中の母親でもネイルをしている層が増加しているという特集を見た。そこでは美しいネイルをほどこし、服装やヘアスタイルもあか抜けた母親達が家事とおしゃれを両立するために睡眠時間を削っているなどと話す映像が流れていた。スタジオでは様々な意味合いでの驚きの声があがり、キャスターは「そういう時代なんですね」と締めた。そこに漂っていたそこはかとない批判的な雰囲気が、私には印象的だった。当時、私は学生で、装うことが生活の大きな部分を占めるような時期だった。その番組を見て「母親になるって微妙」と、ほんの少しだけ暗い気持ちになった。
そして、2011年現在、子育て中の母親のおしゃれをターゲットとした市場は拡大している。例えばファッション雑誌をみると、子育て中の母親向けのものは、女子大生向けやキャリアOL向けと比べて近年に創刊されている傾向が強い。また、印刷部数をみると、光文社のVERYなどは、ファッション雑誌の主要購入層と思われる若い世代の印刷部数を凌駕する勢いを見せる(図1)。
15年ほど前の朝の情報番組で、都内を中心に子育て中の母親でもネイルをしている層が増加しているという特集を見た。そこでは美しいネイルをほどこし、服装やヘアスタイルもあか抜けた母親達が家事とおしゃれを両立するために睡眠時間を削っているなどと話す映像が流れていた。スタジオでは様々な意味合いでの驚きの声があがり、キャスターは「そういう時代なんですね」と締めた。そこに漂っていたそこはかとない批判的な雰囲気が、私には印象的だった。当時、私は学生で、装うことが生活の大きな部分を占めるような時期だった。その番組を見て「母親になるって微妙」と、ほんの少しだけ暗い気持ちになった。
そして、2011年現在、子育て中の母親のおしゃれをターゲットとした市場は拡大している。例えばファッション雑誌をみると、子育て中の母親向けのものは、女子大生向けやキャリアOL向けと比べて近年に創刊されている傾向が強い。また、印刷部数をみると、光文社のVERYなどは、ファッション雑誌の主要購入層と思われる若い世代の印刷部数を凌駕する勢いを見せる(図1)。
また、それぞれの雑誌で扱うファッションのジャンルも増え、幼稚園の送り迎えや小学校の参観日のためのコンサバファッションだけではなく、夫とのデートのための女性らしい装い、また、子どもと遊びやすいけれど流行を意識したキレイめカジュアル、ママ友とのお茶や食事場面での女性目線を意識したトレンドファッション、働く母親のためのキャリアファッション、二十歳前後のごく若い母親をターゲットとしたギャルママファッションなど様々なジャンルなどへと拡大している。
さらに、こういった雑誌では、小さな子どもがいても周囲に気兼ねなく過ごせるような飲食店やネイルをはじめとした美容サービスが受けられるような施設も紹介されており、商品面だけでなく、サービス面でもママ市場は拡大していることが伺える。
これらの背景として、女性の社会進出、社会的地位の向上という言葉が浮かぶかもしれないが、このような言葉が活発に使われた男女雇用機会均等法の時代から約25年も経過した現在では、やや古めかしい印象を受ける。男女平等を基本として育ってきた世代にとっては、女性が性別に制限されずに進学や就職、趣味をはじめとしたライフスタイルを選択することは、すでに当たり前となっている。また、現在の45歳前後のいわゆるバブル世代までは男性が女性をリードするケースが多かったかもしれないが、若い世代になるにつれて、男性と女性が肩を並べる場面が多くなり、最近では鉄道好きの女性や歴史好きの女性などにあらわれるように、ライフスタイルにおける性のボーダーレス化もみられるようになった。
つまり、現在の子育て世代は、まさに男女が肩を並べることが普通の世代であり、女性が、より主体的な価値観をもって育児を楽しみはじめた世代なのではないだろうか。その結果が自己を体現する装いであったり、美容を始めとしたサービスによって得ようとする価値にあらわれるのではないか。
一方で、実は、現在、子育て中のママ市場だけでなく、子どもが手を離れはじめた女性の消費市場も活発である。いつまでも年齢を感じさせずに外見も内面も美しくという意味合いで「美魔女」というキーワードも登場し、マスメディアをにぎわせている。同じ女性として、自分らしい素敵な人生を送る美しい女性が増えることは、とても心強く感じる。
さらに、こういった雑誌では、小さな子どもがいても周囲に気兼ねなく過ごせるような飲食店やネイルをはじめとした美容サービスが受けられるような施設も紹介されており、商品面だけでなく、サービス面でもママ市場は拡大していることが伺える。
これらの背景として、女性の社会進出、社会的地位の向上という言葉が浮かぶかもしれないが、このような言葉が活発に使われた男女雇用機会均等法の時代から約25年も経過した現在では、やや古めかしい印象を受ける。男女平等を基本として育ってきた世代にとっては、女性が性別に制限されずに進学や就職、趣味をはじめとしたライフスタイルを選択することは、すでに当たり前となっている。また、現在の45歳前後のいわゆるバブル世代までは男性が女性をリードするケースが多かったかもしれないが、若い世代になるにつれて、男性と女性が肩を並べる場面が多くなり、最近では鉄道好きの女性や歴史好きの女性などにあらわれるように、ライフスタイルにおける性のボーダーレス化もみられるようになった。
つまり、現在の子育て世代は、まさに男女が肩を並べることが普通の世代であり、女性が、より主体的な価値観をもって育児を楽しみはじめた世代なのではないだろうか。その結果が自己を体現する装いであったり、美容を始めとしたサービスによって得ようとする価値にあらわれるのではないか。
一方で、実は、現在、子育て中のママ市場だけでなく、子どもが手を離れはじめた女性の消費市場も活発である。いつまでも年齢を感じさせずに外見も内面も美しくという意味合いで「美魔女」というキーワードも登場し、マスメディアをにぎわせている。同じ女性として、自分らしい素敵な人生を送る美しい女性が増えることは、とても心強く感じる。
(2011年10月24日「研究員の眼」)
![](https://www.nli-research.co.jp/files/topics/83_ext_01_0.jpeg?v=1709630256)
03-3512-1878
経歴
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2024/07/24 | インバウンドで考えるナイトタイムエコノミー-日本独自の夜間コンテンツと街づくりの必要性? | 久我 尚子 | 研究員の眼 |
2024/07/04 | 訪日外国人消費の動向(2024年1-3月期)-円安効果で消費額はコロナ禍前の1.5倍、2倍の国も | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
2024/06/12 | 増え行く単身世帯と消費市場への影響-家計消費は2025年頃をピークに減少、2050年には現在の1割減、うち単身世帯が3割、高齢世帯が半数へ | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
2024/05/16 | 家計消費の動向(~2024年3月)-実質賃金マイナスで全体では低迷、外出型消費は改善傾向だが温度差も、マインドは上向き | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年07月26日
職場における温度、匂い、音等は、どういう人がシンドイと思っているのか -
2024年07月26日
米GDP(24年4-6月期)-前期比年率+2.8%と前期から大幅上昇、市場予想の+2.0%も大幅に上回る -
2024年07月26日
お金の流れでみる日本経済 -
2024年07月25日
消えた580兆円~住宅投資をしても残高の増加は限定的~日本の住宅投資はなぜ「資産化」しないのか~ -
2024年07月24日
中国経済の現状と注目点-好調は持続せず、不動産不況と貿易摩擦で弱り目に祟り目の中国経済
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
【おしゃれママ市場の拡大とその背景】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
おしゃれママ市場の拡大とその背景のレポート Topへ