- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 日本経済 >
- 雇用関連統計11年8月~額面通りに受け取れない失業率の急低下
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
■見出し
・失業率は前月から0.4ポイントの急低下
・有効求人倍率は改善傾向継続
■introduction
総務省が9月30日に公表した労働力調査によると、8月の完全失業率は前月から0.4ポイント低下し4.3%となった(QUICK集計・事前予想:4.7%、当社予想は4.8%)。
失業率は急低下したが、この結果を額面通りに受け取ることはできない。非労働力化の進展により失業者の増加が抑えられた面が大きいためである。失業者数(季節調整値)は270万人と前月よりも24万人減少したが、雇用者数(季節調整値)は12万人減少(就業者数は16万人減)しており、雇用の増加が失業者の減少につながったわけではないことが読み取れる。非労働力人口(季節調整値)が前月よりも20万人の増加となったことは、求職活動を諦め労働市場から退出した人が増えたことを示唆している。仕事をしていない人が求職活動をしていなければ失業者にはカウントされないため、失業率は下がりやすくなるが、こうした動きを前向きに捉えることはできない。
雇用者数の内訳を産業別に見ると、製造業は4ヵ月連続で増加したが、増加幅は7月の前年比10万人増から同4万人増へと縮小した。建設業は前年比13万人増(7月:同▲2万人減)と2ヵ月ぶりの増加となった。その他の産業では、情報通信業(7月:前年比▲1万人減→8月:同▲14万人減)、運輸業・郵便業(7月:前年比▲5万人減→8月:同▲12万人減)、宿泊業、飲食業(7月:前年比▲8万人減→8月:同▲15万人減)の減少幅が拡大した。
なお、労働力調査は東日本大震災の影響により、岩手県、宮城県、福島県において調査の実施が困難となったため、3月分から当該3県を除いた結果が公表されている。参考として公表されている3県における8月時点の調査再開状況を見ると、宮城県では79.6%、岩手県では60.0%の調査区で調査が実施されるようになっており、7月まで全く調査が実施されていなかった福島県でも8月には39.6%の調査区で調査が再開された。(3県合計では5月:9.1%→6月:23.9%→7月:33.6%→8月:60.6%)。
総務省では引き続き当該3県の調査再開に努めるとしているが、直接の被災地である3県を除いた労働力調査の結果は雇用情勢の厳しさを過小評価している可能性が高いことには留意が必要である。
(2011年09月30日「経済・金融フラッシュ」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1836
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
斎藤 太郎のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/09/17 | 貿易統計25年8月-関税引き上げの影響が顕在化し、米国向け自動車輸出が数量ベースで大きく落ち込む | 斎藤 太郎 | 経済・金融フラッシュ |
2025/09/08 | 2025・2026年度経済見通し-25年4-6月期GDP2次速報後改定 | 斎藤 太郎 | Weekly エコノミスト・レター |
2025/09/01 | 法人企業統計25年4-6月期-トランプ関税の影響で製造業は減益も、非製造業が堅調を維持 | 斎藤 太郎 | 経済・金融フラッシュ |
2025/08/29 | 鉱工業生産25年7月-自動車中心に下振れリスクが高く、7-9月期は減産の可能性 | 斎藤 太郎 | 経済・金融フラッシュ |
新着記事
-
2025年09月17日
貿易統計25年8月-関税引き上げの影響が顕在化し、米国向け自動車輸出が数量ベースで大きく落ち込む -
2025年09月17日
「最低賃金上昇×中小企業=成長の好循環」となるか?-中小企業に託す賃上げと成長の好循環の行方 -
2025年09月17日
家計消費の動向(二人以上世帯:~2025年7月)-実質賃金改善下でも「メリハリ消費」継続、娯楽支出は堅調を維持 -
2025年09月16日
インド消費者物価(25年9月)~8月のCPI上昇率は+2.1%に上昇、GST合理化でインフレ見通しは緩和 -
2025年09月16日
タイの生命保険市場(2024年版)
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年07月01日
News Release
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
【雇用関連統計11年8月~額面通りに受け取れない失業率の急低下】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
雇用関連統計11年8月~額面通りに受け取れない失業率の急低下のレポート Topへ