- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- H1N1型インフルエンザ流行を振り返って
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
2011年3月31日、H1N1型のインフルエンザ(以下H1N1型と記す)の感染症法上の分類が「新型インフルエンザ」から「季節性インフルエンザ」に移され、サーベイランス等の監視体制が緩和された。季節性インフルエンザへの移行は、流行が沈静化したこと、国民の一定数がH1N1型に対する免疫を獲得したと考えられること、インフルエンザ患者の中にH1N1型以外のウイルスも検出されていること、重症患者が季節性インフルエンザと同様に高齢層に移っていること等による。
H1N1型の流行では、流行開始時期と流行期間とに特徴が見られる。H1N1型が流行した2009年は、通常の季節性インフルエンザの流行がおさまった5月に、国内初のH1N1型の患者が報告され、通常の季節性インフルエンザより数か月早い8月後半に流行期に入った。流行ピーク時の患者数は例年の季節性インフルエンザ並であったが、流行期間は例年と比べて長く、患者総数は推計2,077万人と1987年に定点調査が始まって以来最大となった。
しかし、健康被害が季節性インフルエンザや諸外国におけるH1N1型と比べて大きかったわけではない。2,077万人という患者数は季節性インフルエンザと比べてやや多い程度で、死亡数は約200人余りと、季節性インフルエンザと比べて少なかった。諸外国と比べても、国内初の患者が出てから流行開始まで3か月も経過しているなど拡散スピードは遅く、日本でのH1N1型による死亡率は、諸外国と比べて低い。
諸外国と比べて健康被害が少なかった理由として、医療の充実、早期のタミフル投与、早めの学級閉鎖等による拡散抑制があげられている。ただし、ワクチンの接種や外来診療受付の混乱、企業のBCPなどが反省点として指摘されている。
H1N1型は沈静化したが、今後、毒性が強いとされるH5N1型インフルエンザの流行の可能性もある。今回の成功と反省を活かした対応が望まれる。
(2011年06月24日「基礎研マンスリー」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
村松 容子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/09/18 | 保険適用後の不妊治療をめぐる動向~ARTデータとNDBデータの比較 | 村松 容子 | 基礎研レポート |
2025/07/22 | 保険ショップの利用実態とその変化~利用目的とチャネル選択にみる役割の変化 | 村松 容子 | 保険・年金フォーカス |
2025/07/03 | BMIと体型に関する認識のズレ~年齢・性別による認識の違いと健康行動の関係 | 村松 容子 | 基礎研レポート |
2025/07/02 | 日本女性の“やせ”の特徴 | 村松 容子 | 基礎研レター |
新着記事
-
2025年09月19日
日銀短観(9月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは2ポイント上昇の15と予想、物価関連項目に注目 -
2025年09月19日
消費者物価(全国25年8月)-コアCPIは9ヵ月ぶりの3%割れ、年末には2%程度まで鈍化する見通し -
2025年09月18日
米FOMC(25年9月)-市場予想通り、政策金利を▲0.25%引き下げ。政策金利見通しを下方修正 -
2025年09月18日
保険適用後の不妊治療をめぐる動向~ARTデータとNDBデータの比較 -
2025年09月18日
不動産投資市場動向(2025年上期)~日本市場の取引額は高水準を維持。グローバル市場は回復基調を辿るも依然低調
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年07月01日
News Release
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
【H1N1型インフルエンザ流行を振り返って】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
H1N1型インフルエンザ流行を振り返ってのレポート Topへ