2011年05月12日

4月マネー統計~震災後の資金需要で銀行貸出の減少幅が大きく縮小

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■見出し

・貸出動向: 銀行貸出残高は対前年▲1.0%
・主要銀行貸出動向アンケート調査: 企業の資金需要は2年ぶりの増加
・マネタリーベース: 資金供給量は過去最高を記録
・マネーストック: 流動性資金への需要集中が続く

■introduction

日銀が発表した貸出・資金吸収動向等によると、4月の銀行総貸出(平残)の前年比伸び率は▲1.0%と前月の同▲1.8%からマイナス幅が大きく縮小した。17ヶ月連続の前年割れながら、減少幅は2009年11(0.1%増)以来の小幅に。震災後の緊急融資や一部企業の運転資金確保の動きが反映された。
内訳では、都銀等が前年比▲3.1%減(前月は▲4.6%)、地銀が同1.2%増(前月は同1.1%増)と、特に都銀等のマイナス幅縮小の影響が大きい(図表1~4)。
季節要因を考慮せず貸出平残の前月差を見ると(図表5)、都銀等が2.0兆円増、地銀が0.1兆円減となり、都銀等ではリーマン・ショック後の2008年末に次ぐ増加額を記録。一方、預金等の前月差(図表6)も都銀等・地銀とも各4兆円台と高水準であったため、全体として貸出増加は預金流入の範囲内となった。
今後は復興に伴う資金需要の高まりや「被災地金融機関支援の資金供給オペ」など政策効果が期待される一方で、マインド低迷に伴う企業設備・住宅資金等の需要低迷も懸念され、この強弱要因のバランスが銀行貸出のトレンドを左右する構図が続くだろう。

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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