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コラム
2010年12月22日
2010年のJ-REIT(不動産投資信託) 市場を振り返ると、REIT同士の合併や信用力の高いスポンサーへの変更など市場再編がさらに活発化し、公募増資や投資法人債発行の再開といったJ-REIT本来の資金調達機能が回復した。これに、不動産市場安定化ファンド(官民ファンド)の本格始動や日銀によるJ-REIT 買入といった公的な信用補完が加わったことで、環境変化に対する市場の頑健性が大きく向上する年となった。この結果、東証REIT指数(配当込)の年間上昇率は30%に達し、リーマン・ショック前の水準に戻している。
なかでも、日銀の資産買入等の基金を通じたJ-REIT 買入は、アナウンス効果を含めた需給改善へのインパクトが大きく、J-REITを投資対象とした投資信託への資金流入が急増している。12月16日に実施された初回購入額は22億円で、2011年末までに500億円を買い取る計画だ。今回の買入制度が、当初の狙い通り、投資マネーの流入を促す呼び水効果を生んで、J-REITのリスクプレミアム縮小(価格上昇)に成功したことで、今後は、J-REITによる物件取得が積極化し資産デフレ脱却の起点となるかが注目される。
また、リート制度のグランドデザイン見直しを含めて、不動産投資市場の課題と対応策を検討してきた国交省の不動産投資市場戦略会議は、12月17日に報告書を発表した。報告書に記載された、内部留保を可能とする仕組みや減損リスクに対応する減資規定、税務上の利益と会計上の利益の不一致(税会不一致)により生じる不具合が、税制改正などにより解消されれば、来年、創設から節目となる10年が経過するJ-REIT 市場は、新たな成長ステージを迎えることになりそうだ。
ただし、投資家利益を最優先する受託者責任の遵守こそがJ-REIT 制度の根幹であり、投資家利益を疎かにして、真の市場発展は望めない。たとえば、スポンサー企業(REIT設立母体)の信用力低下などによって、J-REITの経営基盤が瓦解するリスクに直面した場合、資産運用会社をはじめとする利害関係者が如何に対応すべきか、投資家利益の保護や投資主によるガバナンスのあり方について、市場共通の規範策定が必要と思われる。
J-REITは、人(運用者)・物(不動産)・金(信用力)・情報(リーシング)といった経営資源の多くをスポンサー企業に依存しているが、これまで上場42社のうち16社(約40%)でメインスポンサーが交代している。そのなかには、スムーズな禅譲により投資主価値が向上したケースもあれば、スポンサー企業の破たんに際して自らの存続・利益を優先するあまり、投資口価格が不動産ファンダメンタルズ以上に暴落したケースもある。これらは、品格の問われる問題でもあるが、J-REIT全体の課題として市場の規律を投資家に示す責任もあるのではなかろうか。
不動産投資市場の公器ともいえるJ-REIT 市場の責任は重く、賃貸市況より一足早い今回の回復に気を緩めることなく、制度強化の取り組みと市場拡大に期待したい。
なかでも、日銀の資産買入等の基金を通じたJ-REIT 買入は、アナウンス効果を含めた需給改善へのインパクトが大きく、J-REITを投資対象とした投資信託への資金流入が急増している。12月16日に実施された初回購入額は22億円で、2011年末までに500億円を買い取る計画だ。今回の買入制度が、当初の狙い通り、投資マネーの流入を促す呼び水効果を生んで、J-REITのリスクプレミアム縮小(価格上昇)に成功したことで、今後は、J-REITによる物件取得が積極化し資産デフレ脱却の起点となるかが注目される。
また、リート制度のグランドデザイン見直しを含めて、不動産投資市場の課題と対応策を検討してきた国交省の不動産投資市場戦略会議は、12月17日に報告書を発表した。報告書に記載された、内部留保を可能とする仕組みや減損リスクに対応する減資規定、税務上の利益と会計上の利益の不一致(税会不一致)により生じる不具合が、税制改正などにより解消されれば、来年、創設から節目となる10年が経過するJ-REIT 市場は、新たな成長ステージを迎えることになりそうだ。
ただし、投資家利益を最優先する受託者責任の遵守こそがJ-REIT 制度の根幹であり、投資家利益を疎かにして、真の市場発展は望めない。たとえば、スポンサー企業(REIT設立母体)の信用力低下などによって、J-REITの経営基盤が瓦解するリスクに直面した場合、資産運用会社をはじめとする利害関係者が如何に対応すべきか、投資家利益の保護や投資主によるガバナンスのあり方について、市場共通の規範策定が必要と思われる。
J-REITは、人(運用者)・物(不動産)・金(信用力)・情報(リーシング)といった経営資源の多くをスポンサー企業に依存しているが、これまで上場42社のうち16社(約40%)でメインスポンサーが交代している。そのなかには、スムーズな禅譲により投資主価値が向上したケースもあれば、スポンサー企業の破たんに際して自らの存続・利益を優先するあまり、投資口価格が不動産ファンダメンタルズ以上に暴落したケースもある。これらは、品格の問われる問題でもあるが、J-REIT全体の課題として市場の規律を投資家に示す責任もあるのではなかろうか。
不動産投資市場の公器ともいえるJ-REIT 市場の責任は重く、賃貸市況より一足早い今回の回復に気を緩めることなく、制度強化の取り組みと市場拡大に期待したい。
(2010年12月22日「研究員の眼」)
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経歴
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
2005年 ニッセイ基礎研究所
2019年4月より現職
【加入団体等】
・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
岩佐 浩人のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
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