2010年11月30日

鉱工業生産10年10月~5ヵ月連続の低下も、底打ちの可能性が高まる

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・鉱工業生産は5ヵ月連続の低下
・10-12月期は減産不可避も年内には底打ちの公算

■introduction

経済産業省が11月30日に公表した鉱工業指数によると、10月の鉱工業生産指数は前月比▲1.8%と5ヵ月連続で低下したが、事前の市場予想(共同通信集計:前月比▲3.4%、当社予想は同▲4.4%)を大きく上回った。出荷指数は前月比▲2.7%と4ヵ月連続の低下、在庫指数は前月比▲1.5%と3ヵ月ぶりの低下となった。
10月の生産を業種別に見ると、エコカー補助金終了後に国内販売が大きく落ち込んでいる輸送機械が前月比▲10.0%とリーマン・ショック後以来の二桁のマイナスとなった。輸送機械だけで生産指数は前月比▲1.7%押し下げられた。なお、輸送機械の5月以降の減産幅(6ヵ月間の累積)は約2割となった。
それ以外の業種では、在庫の大幅な積み上がりから在庫調整局面入りしている電子部品・デバイスは前月比▲3.2%と5ヵ月連続で低下したが、設備投資の持ち直しを反映し一般機械が前月比3.8%と3ヵ月ぶりに上昇した。
速報段階で公表される16業種中、12業種が前月比で低下、4業種が上昇となった。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷(除く輸送機械)は4-6月期の前期比7.4%、7-9月期の同1.8%の後、10月は前月比3.4%となった。GDP統計の設備投資は09年10-12月期以降、4四半期連続で増加しているが、足もとも増勢基調が維持されていると考えられる。
一方、消費財出荷指数は4-6月期の前期比1.6%、7-9月期の同2.0%の後、10月は前月比▲4.8%となった。耐久消費財(前月比▲3.4%)、非耐久消費財(前月比▲7.8%)ともに大きく落ち込んだ。耐久財はエコポイント制度の効果から液晶テレビの出荷が大きく伸びたが、輸送機械の急速な落ち込みがそれを打ち消した。GDP統計の民間消費は7-9月期には前期比1.1%の高い伸びとなったが、10-12月期は反動減を主因として大幅なマイナスが避けられないだろう。
IT関連業種(電子部品・デバイス、情報通信機械)では在庫の大幅な積み上がりが続いてきたが、10月の在庫指数は電子部品・デバイスが前年比32.5%(9月:同37.8%)と高止まりが続く一方、情報通信機械は前年比46.2%(9月:同109.7%)と増加幅が大きく縮小した。ただし、情報通信機械は12月以降のエコポイント制度の縮小(ポイント数約半減)を控えた駆け込み需要により、液晶テレビの販売(出荷)が急増している影響が大きいため、再び在庫が積み上がるリスクもあるだろう。

(2010年11月30日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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