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- 雇用関連統計10年7月~失業率、有効求人倍率ともに改善
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■見出し
・就業者数が2年6ヵ月ぶりに増加
・有効求人倍率は緩やかな改善が続く
■introduction
総務省が8月27日に公表した労働力調査によると、7月の完全失業率は前月から0.1ポイント低下し5.2%となった(ロイター集計事前予想:5.3%、当社予想も5.3%)。失業率は3月以降4ヵ月連続で上昇していたが、ようやく悪化に歯止めがかかった。
雇用者数は前年に比べ3万人増(6月:同▲8万人減)と4ヵ月ぶりに増加した。自営業主・家族従業者の減少幅が大きく縮小したため、就業者全体でも前年に比べ1万人の増加(6月:同▲20万人減)となり、小幅ながらも2年6ヵ月ぶりに増加に転じた。
失業者数は331万人、前年に比べ28万人の減少となり、2ヵ月連続で前年の水準を下回った。失業者の内訳を求職理由別に見ると、非自発的な離職による者が前年に比べ24万人の減少(うち勤め先都合が19万人減)、自己都合による者が3万人の減少となった。
雇用者数の内訳を産業別に見ると、製造業の雇用者数は前年に比べ▲8万人減と18ヵ月連続で減少した。減少幅はピーク時(09年8月の▲106万人減)に比べると大きく縮小しているが、鉱工業生産がここにきて足踏み状態となっているため、製造業の雇用が増加に転じるまでにはまだ時間がかかるだろう。また、公共工事削減の影響などから建設業が前年に比べ▲15万人減と6ヵ月連続で減少した。一方、08年末頃から大幅な減少が続いていた職業紹介・労働者派遣業の雇用者数は前年の反動もあって、5月以降3ヵ月連続で増加している(7月:前年比4万人増)。
従業員規模別には、30人以上の規模では全て増加したが、1~29人の中小企業の雇用者数は前年に比べ▲29万人の減少となり、6ヵ月連続で減少した。明るさが見え始めた大企業に比べ中小企業では依然厳しい状況が続いている。
・失業率高止まりには雇用対策の効果剥落の影響も
景気底打ちから1年以上が経過しているにもかかわらず、失業率が高止まりしている背景としては、雇用対策の効果が剥落してきたことが考えられる。
雇用対策の一環として導入された雇用調整助成金の支給要件緩和により急増した同制度の申請数は、ピーク時の09年4月には253万人となったが、その後は緩やかな減少が続いており、直近(10年7月)では121万人となっている。このこと自体は09年春以降の景気回復を反映した明るい動きとも捉えられるが、生産、売上などの持ち直しにより雇用調整助成金の申請に必要な要件を満たさない企業が増えたことで、それまで企業内にとどまっていた潜在的な失業者の一部が顕在化していることも考えられる。同制度の利用によって企業が余剰人員を抱えているため、景気が持ち直しても新規採用に踏み切りにくくなっているといったこともあるだろう。
雇用調整助成金の拡充によって、リーマン・ショック以降の失業率の急上昇を抑制してきたことは確かだが、その副作用として対策の効果剥落が雇用の本格回復を妨げる一因になっている可能性がある。
(2010年08月27日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1836
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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