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参議院選挙は民主党の敗北で幕を閉じたが、選挙のたびに注目されるのが勝敗ラインの設定である。高く設定してしまうと達成できなかった場合に責任を問われかねないし、低すぎたり明示しなかったりすると、それはそれで批判の種になる。今から10年前のことになるが、2000年6月の総選挙における自民党野中幹事長(当時)の設定は巧みだったと思う。
この選挙は、定数が500から現在の480へ比例区で20削減されて初めての選挙だったが、野中氏は「自民党の前回獲得議席は239。定数が20減ったのでそこから10を引いた229が目標」と勝敗ラインを引いた。当時の自民党の議席占有率は約半分だったので、定数が減った分の半分を引くというのは至極当然のように見え反論しにくい。しかし、自民党の議席占有率は小選挙区では6割を上回るのに対して、全国11ブロックの比例区では3割程度に過ぎず、各ブロックの最後の1-2議席という限界的な部分だとさらに下がる。定数20減の影響は実はせいぜい5議席程度に過ぎなかったのだ。
当時の政治状況は、4月に突然倒れた小渕首相の後を受けた森内閣が不人気の中、新進党解党などで焼け太った自民党が議席(解散時は271)を減らすことは避けられないが、民主党にはまだ政権を取るほどの力はなく、連立を組む公明党・保守党と合わせて安定多数を確保できることは間違いなかった。むしろ問題は自民党内の抗争で、議席を減らしても執行部が続投できる理屈が求められた。
第一党が300議席を超え大勝した直近2回の選挙結果からすれば、何とも微妙なところが問題になっていたものだが、それが当時の状況だった。結果は自民党の獲得議席は233。野中氏の設定した勝敗ラインを辛うじて上回り、森内閣と野中幹事長をはじめとする自民党執行部は続投することとなった。野中氏はこのあと11月に起こったいわゆる「加藤の乱」を幹事長として制圧することになる。
ことほどさように、もっともらしい数字は疑ってかかることが必要だが、そういう意味では、平均値は要注意だ。個人金融資産が1,400兆円あって、国民1人あたり1,100万円と言われると、どこにそんなお金があるの?という気分になるが、これはあくまで平均値。別の世帯単位のアンケート調査で見ると、貯蓄残高の中央値、すなわち、残高の低い世帯から並べて(高い世帯から並べても同じ)ちょうど真ん中に位置する世帯が保有する貯蓄の額は平均値の半分にも満たない。
平均寿命というのも曲者だ。ある新興国の平均寿命が60歳だからといって、半分の人が60歳までに亡くなる訳ではない。平均寿命が低い大きな理由は乳幼児死亡率が高いことであり、60歳を超えて長生きする人の割合は半分よりずっと大きい。
それはさておき、今年度末の国と地方の長期債務残高が862兆円、国民1人あたり676万円というのは逃げようのない事実である。その負担が軽くなるマジックがあればよいのだが・・・。
(2010年08月25日「基礎研マンスリー」)
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