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東日本大震災の発生から2年余りが経過した。
「震災と保険」というテーマからは、どうしても地震保険のことが想起され、生命保険が話題になることは少ない。現に、東日本大震災の際の民間生保全社の支払額は約1600億円にとどまり、地震保険を中心とする損害保険の支払額の約1割に過ぎない。
しかしながら、それは、個々の家族や家計にとって生命保険が重要でない、ということでは決してない。東日本大震災で家計の担い手が死亡した家族の数は、建物が全半壊し住むところを失った家族の数に比べればはるかに少ないが、そうした家族においては、生活の再建に一層の困難が想定される。生命保険はそうした家族の生活の再建を手助けする重要なツールである。
そうした役割を担う生命保険だが、私には気になる点が1つある。それは、災害関係特約において、地震や津波などの際には保険金が削減されたり支払われなかったりするかもしれない、という規定(削減支払条項)が約款に存在することである。
災害関係特約は主契約に付加して契約される。主契約の死亡保険金が死亡の原因の如何を問わず支払われるのに対して、災害関係特約の死亡保険金は不慮の事故で死亡した場合にのみ上乗せして支払われる仕組みである(冒頭の東日本大震災の支払額1600億円のうち500億円がこうした災害死亡の上乗せ保険金である)。
何の前兆もなく、また準備もできていない、不慮の事故による死亡の場合に病気で死亡する場合よりも高い保険金を受け取りたい、という加入者の気持は理解できる。そんな加入者にとって、地震や津波の場合には上乗せ部分は受け取れないかもしれないということはすんなりとは納得しにくいだろうし、不安も感じるだろう。
現実には、阪神・淡路大震災の場合も、東日本大震災の場合も、全ての会社で削減支払条項は適用せず、災害死亡保険金は全額支払われた(各社は地震発生直後に全額支払うことを宣言した)。さらに遡れば、第二次世界大戦でも関東大震災でも、生命保険業界は保険金を全額支払ってきた歴史がある。
それなら、一歩進んで、削減支払条項自体の削除を検討の俎上に乗せられないだろうか。もちろん、会社によっても影響度に大きな差があり、慎重な検討が必要ではあるが、保険事業は「安心」を提供するビジネスである。ことが起こる前から加入者に安んじていただければ、保険商品の値打ちもそれだけ上がるというものだ。
(2013年04月15日「研究員の眼」)
明田 裕
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