コラム
2014年01月06日

情報は緊急時こそ価値がある

明田 裕

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正月3日の朝、帰省していた京都の母親宅で寝ぼけ眼でテレビをつけたら、「有楽町で火災、東海道新幹線は全線で運転見合わせ」と報じていた。何の危機感もなくお雑煮を祝った後で再びテレビをつけたらまだ不通…あわててエクスプレス予約していた当日夜の東京行きのぞみを翌日4日に変更しようとしたが、当然ながら満席。

お昼のニュースの中で運転再開の報が流れ、ホッと一安心。しばらくしてJRのホームページで確認すると、午前中の便はほとんど運休になったもようだが午後の便の運休はないようで二安心。「最大で5時間20分遅れるなどダイヤの乱れが続いている」とのニュースにも、5時間20分遅れたのは火災発生前に出発した列車で午後の便はさほどの遅れはなかろうと高をくくって、予約した列車の定時の発車時刻に間に合うように京都駅に向かった。

ところが、京都駅新幹線乗り場は人であふれており、多くの人がホームに上がる階段やコンコースに座りこんでいる。そして情報がない。電光掲示板に直近の出発予定列車が4本表示されているのが唯一の情報だが、各列車が一様に遅れているわけではない。私が京都駅に着いたのは19時頃だったが、その時点では、確か一番上に18時06分発、次に18時02分発、その下に16時43分発…といった要領で、遅れ時間は列車によって異なる。

しばらくして、新大阪始発の列車は遅れが少なく、博多または広島始発の列車は遅れが大きいことに気がついた。実は列車番号で始発駅が分かる。二桁以下は博多始発、100番台は博多または広島始発、200番・300番台は新大阪始発などと決まっている。鉄道オタク見習の私はそのことを知っていたので気がついたわけだが、ほとんどの乗客は訳が分からず、(人によっては自分の予約した列車より1時間以上後の発車予定の列車が先に発車するという不条理を感じながら)自分の予約した列車が電光掲示板に掲示されるのをひたすら待っていた。

列車の遅れはやむを得ないとしても、自分の予約した列車がどれくらい遅れて到着・発車するかが分からないことがつらい。「2時間程度の遅れ」と分かっていれば、駅ビルや駅前でゆっくり食事をとることもできるし、その前に、家を出るのを遅らせることもできる。そして何より、心の安心感が違う。

各列車のおおよその遅れ時間をネットで開示することができないものだろうか。もちろん番線繰りなどの関係で遅れは徐々に拡大していくのだろうが、最新状態の遅れ時間を情報提供すれば、乗客はよほど対応しやすくなると思う。コンコースでも多くの人はスマホや携帯で情報を知ることができ、周りの人に知らせることができる。

開示した遅れ時間よりも早く列車が到着・発車するケースが生じ、乗り遅れて苦情になることを心配されているのかもしれないが、だからといって全く開示しないというのもいかがなものか。少し安全を見て少なめの時間を示して「○時間○分以上」とするとか、工夫の余地はあろう。

いずれにせよ、災害時も含めて、緊急時の情報提供については、平時から色々なケースを想定してよくよく事前準備しておく必要があるようだ。

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