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- 法人企業統計09年10-12月期~企業収益の回復基調が鮮明に
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■見出し
・経常利益の水準はピーク時の7割弱まで戻す
・設備投資の回復は遅れる
・10-12月期・GDP2次速報は小幅下方修正を予測
■introduction
財務省が3月4日に公表した法人企業統計によると、09年10-12月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比102.2%(09年7-9月期:同▲32.4%)と、10四半期ぶりの増加となった。
固定費(7-9月期:前年比▲3.7%→10-12月期:同▲1.9%)、変動費(7-9月期:前年比▲17.3%→10-12月期:同▲5.3%)ともに前期に比べ減少幅は縮小したが、輸出の回復を主因として売上高の減少幅が急速に縮小した(7-9月期:前年比▲15.7%→10-12月期:同▲3.1%)ことが企業収益の高い伸びにつながった。製造業が前年比864.7%(7-9月期:同▲69.3%)、非製造業が前年比38.1%(7-9月期:同▲7.8%)であった。
経常利益が前年比で非常に高い伸びとなったのは、リーマン・ショック後の急速な落ち込みから前年の水準が極めて低かったこともあるが、季節調整済前期比で見ても4-6月期から3四半期続けて30%台の高い伸びとなっている。経常利益(季節調整値)の水準は09年1-3月期には直近のピーク時(07年1-3月期の15.9兆円)の3割弱(27.5%)まで落ち込んだが、10-12月期(10.7兆円)には7割弱(67.4%)まで回復した。企業収益は09年度入り後、順調な回復を続けている。
売上高経常利益率は全産業ベースで3.1%となり、前年に比べ1.6ポイント改善した(7-9月期は▲0.5ポイントの悪化)。製造業は前年差3.4ポイント(7-9月期は同▲2.1ポイント)と10四半期ぶりに改善、非製造業は前年差0.8ポイント(7-9月期は同0.2ポイント)と2四半期連続で改善した。製造業、非製造業ともに変動費率の低下が利益率の改善に大きく寄与している。
原油価格は足もとでは前年比で上昇に転じており、これまで減少が続いていた変動費は今後増加に転じ、企業収益の下押し要因となるだろう。一方、海外経済の回復を背景とした輸出の増加を主因として売上高は1-3月期には前年比で増加に転じる可能性が高い。貿易統計の輸出金額は09年7-9月期の前年比▲34.4%から10-12月期に同▲8.0%へと減少幅が大きく縮小した後、10年1月は同40.8%の大幅増加となった。
10年1-3月期は07年4-6月期以来、11四半期ぶりの増収増益となることが予想される。
経常利益の内訳を業種別に見ると、製造業は18 業種中、石油・石炭製品、生産用機械器具を除く16業種が黒字(原数値)となった(黒字業種数は1-3月期が4業種、4-6月期が10業種、7-9月期が12業種。ただし、4-6月期から一部で業種分類の改定が行われたため、単純な比較はできない)。電気機械器具、情報通信機械が5四半期ぶりに黒字となったほか、国内外の自動車購入促進策の効果で国内販売、輸出ともに好調が続く輸送用機械は7-9月期に4四半期ぶりに黒字に転じた後、10-12月期も黒字となった。
非製造業では、不動産業(前年比▲39.9%)、運輸・郵便業(前年比▲16.4%)は引き続き減益となったが、卸・小売業(前年比139.4%)、物品・賃貸業(前年比78.0%)が高い伸びとなった。
労働分配率(当研究所による季節調整値)は3四半期連続で低下し65.2%となった。労働分配率は09 年1-3月期には過去最高水準の71.9%となったが、4-6月期からの3四半期で6ポイント以上低下した。人件費の削減が続く中、企業収益が急速に回復していることが労働分配率の低下につながっている。ただし、企業の人件費抑制姿勢は依然根強いと考えられるため、賃金の削減は当面続く可能性が高い。企業部門の改善が家計部門に波及するまでには相当の時間を要するだろう。
(2010年03月04日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1836
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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