コラム
2010年02月02日

消費のあり方を変える若者の可能性

桑畠 滋

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最近の若者は物欲がなく、消費をしなくなったと言われて久しい。その背景として兄弟が少なく、欲しいものがすぐ手に入る商品飽和の時代に生まれ育ったことによる物欲の低下や、高度成長期、バブル期など日本が良い時を知らないことに加え、年金不安などの漠然とした将来不安が影響しているといったことが指摘される。

確かに、車を持つことに興味もなく、移動手段は専ら電車、週末にどれだけ酔っ払っていても12時間際になると、携帯電話片手に終電時刻を調べ、乗り遅れないようにそそくさと家路につく友人は私の周りにも多い。酒の席でも、貯蓄が多い友人などは周りから羨望の眼差しを向けられる。しかし、これぐらいのことは現代の若者に固有のことではなく、かつて若者であった中高年の方々も経験していることではないだろうか。20代消費者のうちの1人として、私は果たして本当に若者は物欲がなく消費をしなくなったのであろうかと首を傾げたくなる。

現代の若者も、かつての若者と同様に流行には敏感で、ドラマの俳優、雑誌のモデルに憧れ、彼らが宣伝する最新のアイテム(携帯電話、洋服、鞄、財布、腕時計など)を購入する。私の友人にも何十万円もする鞄や、腕時計をしている人は珍しくない。彼らの物欲は旺盛でその目は常に次のターゲットを見据えている。

このように現代の若者はかつての若者と同様に物欲があり、消費をすることを楽しんでいる。両者の間に決定的な違いがあるとすれば、消費のスタイルに変化が見られることである。現代の若者はインターネット、twitterなどのコミュニケーションツールに相対的に明るいため、一昔前までの若者のように、自分の住んでいるエリアの商業施設に出向き、商品を購入する必要はなく、より価格の安い商品を日本中あるいは世界中から簡単に探し出すことができる。そのため、より少ない支出で自分の欲求を満たすことができるのだ。若者は消費意欲がなくなったのではなく、消費の事業仕分けを行い、賢く消費しているだけなのだ。

また、このような若者の消費スタイルが後の世代にも浸透していくことは、日本の消費のあり方そのものを変えてしまう可能性がある。何故ならそのような時代では、地代のかかる都心の一等地に大型商業施設を構える必要性がなくなるからだ。大量の商品を抱えた倉庫が郊外に立ち並び、都心の一等地から大型商業施設がなくなるような日が来るかもしれない。
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