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コラム
2009年12月22日
1.需要と供給
現政権の弱点の一つとして、しばしば、長期的に日本経済を成長させる戦略が無いという点が指摘される。これに対して、政府は12月15日に成長戦略策定会議の開催を決定し、成長戦略は近々発表されることになっている。菅副総理が率いる国家戦略室を中心とした成長戦略会議のヒアリングで、旧政権で経済・財政政策の司令塔役だった竹中平蔵慶大教授(元経済財政相)が「成長の基礎は供給側の強化だ」と述べたのに対して、菅副総理は「需要をつくることが重要だ」と応酬したと報道されている。企業経営者との会合でも、菅副総理は「供給サイドは効率化したが需要は増えていない」と指摘したそうだ。
現政権の考え方は必ずしも明確ではないが、成長戦略策定会議の実質的な責任者である菅副総理の発言からすると、内需拡大ということが成長戦略の基本となっているようだ。来年度予算に盛り込まれるはずの、子供手当てや高校の授業料実質無料化といった家計に手厚い政策対応は、内需の中でも家計消費に焦点を当てた政策だと解釈できる。
現政権の考え方は必ずしも明確ではないが、成長戦略策定会議の実質的な責任者である菅副総理の発言からすると、内需拡大ということが成長戦略の基本となっているようだ。来年度予算に盛り込まれるはずの、子供手当てや高校の授業料実質無料化といった家計に手厚い政策対応は、内需の中でも家計消費に焦点を当てた政策だと解釈できる。
2.消費を左右する消費者のアニマルスピリット
緊急経済対策に盛り込まれた、離職者の生活支援や雇用調整助成金などの政策も家計に直接資金を提供して消費の下支えを果たすだろう。しかし、子供手当てなどの所得移転政策は財源をどうするのかがネックとなる。財政赤字を膨らませれば消費刺激効果があるが、どこかで増税をして財政収支を均衡させようとすると、消費刺激効果は失われてしまう。現在の経済情勢では急速に落ち込んだ需要を支えるための一時的な消費刺激策も必要だが、長期的な成長戦略としては持続的に消費を押し上げる効果のある政策が必要だ。
今年話題になった経済書にアカロフとシラーが書いた「アニマルスピリット」という本がある。ケインズは企業の設備投資が経営者のアニマルスピリットによって決まると述べているが、アカロフらの本では、より広い経済活動の領域でアニマルスピリットが重要な役割を果たしていると指摘されている。例えば、家計の消費も消費者の安心・確信というアニマルスピリットに大きな影響を受けているということだ。
今年話題になった経済書にアカロフとシラーが書いた「アニマルスピリット」という本がある。ケインズは企業の設備投資が経営者のアニマルスピリットによって決まると述べているが、アカロフらの本では、より広い経済活動の領域でアニマルスピリットが重要な役割を果たしていると指摘されている。例えば、家計の消費も消費者の安心・確信というアニマルスピリットに大きな影響を受けているということだ。
3.カギを握る、年金・介護・医療
消費者が安心・確信を持てるということについて、今の日本経済に最も重要なことは何かといえば、それは老後生活の安定に対する安心・確信だろう。少子高齢化で、いずれ公的年金制度が維持できなくなるのではないかという不安を口にする人は多い。病気や寝たきりになった時でも本当に大丈夫だという確信が持てなければ、高齢者も貯蓄を使おうとはしないだろうし、現役世代も老後生活への不安が強ければそれだけ多く貯蓄しようとして消費の節約に励むだろう。
将来に対する自信・確信が持てなければ、いざという時に備えようとして人々が節約に走るのは当然だ。超高齢社会でも維持できる、信頼できる年金・介護・医療制度を確立すること、民主党流の成長戦略はこれができるかどうかにかかっているのではないだろうか。
将来に対する自信・確信が持てなければ、いざという時に備えようとして人々が節約に走るのは当然だ。超高齢社会でも維持できる、信頼できる年金・介護・医療制度を確立すること、民主党流の成長戦略はこれができるかどうかにかかっているのではないだろうか。
(2009年12月22日「エコノミストの眼」)
櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)
櫨(はじ) 浩一のレポート
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