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コラム
2009年11月19日
かつて王貞治の描く放物線を見て、野球を始めた子供は数多いだろう。今後、石川遼の豪快なドライバーショットを見てゴルフを始める子供たちは急増するに違いない。世代を超えて彼らに共通するものは、子供達のハートをがっしりと鷲摑みにしてやまないシンプルなカッコ良さである。いつか自分もあんな風になりたいと、そのスポーツを始めるきっかけを与える。そういった子供達の中からまた次の世代のヒーローが誕生し、正の循環が築かれていく。さて自動車に関してはどうだろうか。
自動車業界は、若者の車離れに頭を悩ませているといった類の話をよく耳にする。交通手段が発達し、都会では、もはや車が必需品ではなくなりつつあることがその一因であるかもしれない。しかし、現代の若者が車に興味を持つきっかけとなる、シンプルにカッコ良い車に出会う機会があまりなかったことも大きな要因となっているのではないだろうか。今の若者は1970年代のスーパーカーブーム、80年代後半から90年頃のF1ブームを経験することなく大人になった。
私も車離れが深刻な若者世代の一員であるが、車を所有している。通っていた大阪府吹田市の小学校はちょうど中国自動車道を見下ろすように建っており、昼休みなどの空き時間に友人達とそこを走る車を眺めていた。お目当ては流線型の車体で大きなエンジン音を奏で、地を這うように疾走するスポーツカーだった。そこにはシンプルなカッコ良さがあり、いつか自分達もあんな車に乗ってみたいと強く思ったものだ。私の故郷は決して交通の便は悪くないが、当時の友人の多くが今では車を保有している。それは同世代と比べてシンプルでカッコ良い車と出会う機会が多かったためだろう。
これから先の子供達はますますシンプルにカッコ良い車と出会う機会が減少してしまうのではないか。足元ではエコカー減税、環境対応車買換え補助制度などの政策効果から、空前の環境対応車ブームが到来している。乗用車販売実績をみるとハイブリッド車、低燃費車が軒並み上位を占めている。電気自動車の開発競争にも拍車がかかっており、各国モーターショーも電気自動車やハイブリッド車などの環境対応車で溢れ返っている。コストパフォーマンスの向上、CO2排出量削減に繋がることは喜ばしい限りではあるが、環境対応車ブームは次世代へ伝播することなく、長くは続かないだろう。そこにはシンプルなカッコ良さが欠けている。同じような性能、形をした車が道路を埋め尽くすようになれば、子供達の視線が車道に向かうこともなくなり、若者の車離れは加速していく。子供たちにシンプルにカッコ良いと思わせる車を作ることがこれからの若者の車離れを止める第一歩になるのではないだろうか。
自動車業界は、若者の車離れに頭を悩ませているといった類の話をよく耳にする。交通手段が発達し、都会では、もはや車が必需品ではなくなりつつあることがその一因であるかもしれない。しかし、現代の若者が車に興味を持つきっかけとなる、シンプルにカッコ良い車に出会う機会があまりなかったことも大きな要因となっているのではないだろうか。今の若者は1970年代のスーパーカーブーム、80年代後半から90年頃のF1ブームを経験することなく大人になった。
私も車離れが深刻な若者世代の一員であるが、車を所有している。通っていた大阪府吹田市の小学校はちょうど中国自動車道を見下ろすように建っており、昼休みなどの空き時間に友人達とそこを走る車を眺めていた。お目当ては流線型の車体で大きなエンジン音を奏で、地を這うように疾走するスポーツカーだった。そこにはシンプルなカッコ良さがあり、いつか自分達もあんな車に乗ってみたいと強く思ったものだ。私の故郷は決して交通の便は悪くないが、当時の友人の多くが今では車を保有している。それは同世代と比べてシンプルでカッコ良い車と出会う機会が多かったためだろう。
これから先の子供達はますますシンプルにカッコ良い車と出会う機会が減少してしまうのではないか。足元ではエコカー減税、環境対応車買換え補助制度などの政策効果から、空前の環境対応車ブームが到来している。乗用車販売実績をみるとハイブリッド車、低燃費車が軒並み上位を占めている。電気自動車の開発競争にも拍車がかかっており、各国モーターショーも電気自動車やハイブリッド車などの環境対応車で溢れ返っている。コストパフォーマンスの向上、CO2排出量削減に繋がることは喜ばしい限りではあるが、環境対応車ブームは次世代へ伝播することなく、長くは続かないだろう。そこにはシンプルなカッコ良さが欠けている。同じような性能、形をした車が道路を埋め尽くすようになれば、子供達の視線が車道に向かうこともなくなり、若者の車離れは加速していく。子供たちにシンプルにカッコ良いと思わせる車を作ることがこれからの若者の車離れを止める第一歩になるのではないだろうか。
(2009年11月19日「研究員の眼」)
桑畠 滋
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