- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経営・ビジネス >
- 企業経営・産業政策 >
- 求められる転職市場の労働力調整機能
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
厚生労働省が発表した「雇用動向調査」によれば、2008年の常用労働者に占める転職者の割合を示す転職入職率(パート除き)は、景気悪化の影響により前年比1.2ポイント低下し、7.5%となった(図表-1)。「終身雇用制の崩壊」が言われて久しいが、ここ10年は転職入職率(同)が1割弱で推移しており、景気拡大局面にあった07年までの数年間で見てもほぼ横ばいと、雇用の流動化が加速している姿は特段見受けられない。
また、近年の主な産業間での転職状況を見ると、例えば製造業の離職者100名のうち43名が製造業に再就職するなど、各産業とも同一産業内での転職が最も多い(図表-2)。上述の通り相変わらず転職者が少ないなかで、産業間の人の流れも硬直的である。
従来、日本企業では主に新卒採用数の増減で企業内人員の調整が行われ、これが産業間の労働力調整に繋がってきたが、今後は少子化による新卒市場の縮小によって、調整機能の低下が見込まれ、中長期的に転職市場の重要性が高まっていく。
わが国では長らく第三次産業へのシフト、すなわちサービス産業化が進行しており、今後もこの動きに沿った労働力の流れが続くだろう。また、今後少子高齢化が進む中でわが国が成長を続けて行くためには、成長分野への迅速な産業転換が重要である。この際には優秀な人材をスムーズに産業間移動させることが出来るかどうかが鍵となるが、現在の小規模かつ硬直的な転職市場の状況との間には大きなギャップがある。
このギャップを埋めるためには、転職の阻害要因になっていると思われる労使双方の情報不足の解消や長期勤続者優遇型の退職金制度からの転換、未経験分野への転職をサポートする職業訓練の充実などを、これまで以上に推し進めていくことがポイントになりそうだ。
(2009年10月23日「基礎研マンスリー」)

03-3512-1870
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
上野 剛志のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/02/12 | 貸出・マネタリー統計(25年1月)~定期預金の伸び率が14年半ぶりの高水準に、地銀の貸出が勢いを増す | 上野 剛志 | 経済・金融フラッシュ |
2025/02/07 | 金価格は史上最高値を更新、まだ上昇余地はあるか? | 上野 剛志 | Weekly エコノミスト・レター |
2025/02/07 | 2025年はどんな年? 金融市場のテーマと展望 | 上野 剛志 | 基礎研マンスリー |
2025/01/22 | トランプ政権始動、円相場の行方は関税次第に~マーケット・カルテ2月号 | 上野 剛志 | 基礎研マンスリー |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2025年02月18日
今週のレポート・コラムまとめ【2/12-2/17発行分】 -
2025年02月17日
タイ経済:24年10-12月期の成長率は前年同期比3.2%増~純輸出と政府支出が拡大、2期連続で+3%台の成長に -
2025年02月17日
ロシアの物価状況(25年1月)-サービスインフレ加速で前年比9.9%まで上昇 -
2025年02月17日
政策形成の「L」と「R」で高額療養費の見直しを再考する-意思決定過程を詳しく検討し、問題の真の原因を探る -
2025年02月17日
QE速報:10-12月期の実質GDPは前期比0.7%(年率2.8%)-3四半期連続のプラス成長も、内需は低迷
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【求められる転職市場の労働力調整機能】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
求められる転職市場の労働力調整機能のレポート Topへ