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- 地方分権改革の行方~「市民自治社会」を目指して
コラム
2009年08月11日
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衆議院選挙が近づき各政党の活動が活発化している。今回の総選挙の争点のひとつに地方分権改革がある。特に全国知事会が地方分権改革に関する公開討論会を開催し、さらに政権公約の評価結果を公表したことにより、広く国民の注目を集めている。
地方分権改革の目的は、第1に国は外交・防衛や安全保障など国家全体の利益にかかわる事項に専念して中央政府の役割を必要最小限にとどめてそのスリム化を図ること、第2に地方に財源と権限を委譲して地方政府は実情にあった自由度の高い施策を展開して活力ある行政運営を行うことだ。第3は基礎自治体である市町村の権能を強化して市民のニーズと意思が的確に行政に反映される「市民自治社会」を確立することである。
日本は少子高齢化が進展し、これから本格的な人口減少社会を迎える。その中で一定水準の財政力と行政能力を確保するために平成の市町村大合併が実施された。基礎自治体の規模や能力の拡大は不可欠だが、それは市民が地方政治の意思決定の場から一層距離を置くことにもなりかねない。
そこで地方へ委譲された財源を地方の状況に合わせて適切に活用するためには、的確に市民の意思を行政に反映する仕組みが必要なのである。民主党の政策集INDEX 2009では「地域主権の確立」として「合併前の市町村を単位とする一定の権限を持った自治区を設ける」とし、「将来的には多様性のある基礎的自治体を重視した地域主権国家を目指す」としている。
また、コミュニティ政策として自民党は重点施策2009に「地域コミュニティの再生と活性化のためにコミュニティ活動基本法を制定する」とし、民主党は「地域主権を確立するためにシティマネージャー制度の導入」などを挙げている。これまでも千葉県市川市や愛知県一宮市では、市民や納税者の意思に基づく税金の一部を市民活動支援に充てる制度を条例で制定している。
このように地方分権改革の重要な点は、地方への権限と財源を移譲した後に基礎自治体が主体となる「市民自治社会」をいかにして確立するのかということだ。元鳥取県知事の片山善博氏は地方分権改革に関するテレビインタビューで、『永田町や霞が関と国民の意識のずれは大きいが、地方政府と市民の意識のずれも小さくない』と語っていた。
今回、全国知事会が総選挙の争点として地方分権改革をクローズアップし、その存在感を示したが、今後は地方分権改革の核心ともいえる分権後の「市民自治社会」をつくるためのローカルガバナンスのあり方を地方分権改革の将来像として示すことが重要ではないだろうか。
地方分権改革の目的は、第1に国は外交・防衛や安全保障など国家全体の利益にかかわる事項に専念して中央政府の役割を必要最小限にとどめてそのスリム化を図ること、第2に地方に財源と権限を委譲して地方政府は実情にあった自由度の高い施策を展開して活力ある行政運営を行うことだ。第3は基礎自治体である市町村の権能を強化して市民のニーズと意思が的確に行政に反映される「市民自治社会」を確立することである。
日本は少子高齢化が進展し、これから本格的な人口減少社会を迎える。その中で一定水準の財政力と行政能力を確保するために平成の市町村大合併が実施された。基礎自治体の規模や能力の拡大は不可欠だが、それは市民が地方政治の意思決定の場から一層距離を置くことにもなりかねない。
そこで地方へ委譲された財源を地方の状況に合わせて適切に活用するためには、的確に市民の意思を行政に反映する仕組みが必要なのである。民主党の政策集INDEX 2009では「地域主権の確立」として「合併前の市町村を単位とする一定の権限を持った自治区を設ける」とし、「将来的には多様性のある基礎的自治体を重視した地域主権国家を目指す」としている。
また、コミュニティ政策として自民党は重点施策2009に「地域コミュニティの再生と活性化のためにコミュニティ活動基本法を制定する」とし、民主党は「地域主権を確立するためにシティマネージャー制度の導入」などを挙げている。これまでも千葉県市川市や愛知県一宮市では、市民や納税者の意思に基づく税金の一部を市民活動支援に充てる制度を条例で制定している。
このように地方分権改革の重要な点は、地方への権限と財源を移譲した後に基礎自治体が主体となる「市民自治社会」をいかにして確立するのかということだ。元鳥取県知事の片山善博氏は地方分権改革に関するテレビインタビューで、『永田町や霞が関と国民の意識のずれは大きいが、地方政府と市民の意識のずれも小さくない』と語っていた。
今回、全国知事会が総選挙の争点として地方分権改革をクローズアップし、その存在感を示したが、今後は地方分権改革の核心ともいえる分権後の「市民自治社会」をつくるためのローカルガバナンスのあり方を地方分権改革の将来像として示すことが重要ではないだろうか。
(2009年08月11日「研究員の眼」)
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