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コラム
2009年08月03日
1.バラ色のマニフェスト
自由民主党のマニフェストが発表されて、総選挙に向けた各党のマニフェストが出揃った。
各党のマニフェストを見ると、それぞれ魅力的な政策のリストが並んでいる。すべての国民に一定額が保障される最低生活保障、最低保障年金制度の創設、定額減税の実施、幼児教育の無償化、子供手当ての支給等、どれもこれも実施されれば国民の生活が良くなるだろうというものばかりだ。各党のマニフェストに掲げられた政策は、どれも立派なもので政策を実施したら生活が悪くなるなどというものはまず見つからない。それは当たり前のことで、それぞれの政策にはそれなりの効果が見込まれるから、マニフェストの中身にリストアップされているのだ。仮にどの党が政策を担ったとしても、書いてある通りに政策を実施できれば、日本の未来はバラ色に見える。
各党のマニフェストを見ると、それぞれ魅力的な政策のリストが並んでいる。すべての国民に一定額が保障される最低生活保障、最低保障年金制度の創設、定額減税の実施、幼児教育の無償化、子供手当ての支給等、どれもこれも実施されれば国民の生活が良くなるだろうというものばかりだ。各党のマニフェストに掲げられた政策は、どれも立派なもので政策を実施したら生活が悪くなるなどというものはまず見つからない。それは当たり前のことで、それぞれの政策にはそれなりの効果が見込まれるから、マニフェストの中身にリストアップされているのだ。仮にどの党が政策を担ったとしても、書いてある通りに政策を実施できれば、日本の未来はバラ色に見える。
2.問題は政策実施の費用調達
マスコミが行っているマニフェストの比較は、それぞれの政党が掲げている政策の中身の比較である。マニフェストは、掲げられている政策が充実していればそれだけ良いものだと評価すべきなだろうか?子育ての支援も高齢者の医療・介護も、現役世代の就業支援も、どれもこれも手厚ければ手厚いだけ国民にとっては有り難いに決まっている。しかし、手厚い政策を実施するには、それに対応した資金が必要だ。手厚い政策を実施するのであれば、その費用は国民の負担に求めるしかない。税金なのか社会保険料なのか、誰がどの程度負担するのかが明確にされるべきだ。
一方、新たな費用負担を考えないのであれば実施する政策を限定せざるを得ない。財源が限られているのであれば、その範囲でどのような政策を実施するかを考えなくてはならない。これまで行っていた政策で廃止するものは何か、何を実施しないのかを明確にする必要がある。結局のところ総選挙で問われるべき問題は、「どのような政策が望ましいのか」ということではなくて、「政策を実施するための費用をどう調達するか」というところにある。
一方、新たな費用負担を考えないのであれば実施する政策を限定せざるを得ない。財源が限られているのであれば、その範囲でどのような政策を実施するかを考えなくてはならない。これまで行っていた政策で廃止するものは何か、何を実施しないのかを明確にする必要がある。結局のところ総選挙で問われるべき問題は、「どのような政策が望ましいのか」ということではなくて、「政策を実施するための費用をどう調達するか」というところにある。
3.希望と幻想は別物だ
今回の各党のマニフェストで気になるのは、国民が痛みを感じることなく充実した政策の実施が可能だと言っているように見えることだ。確かに現在の行政に無駄はあちこちにあるのでその削減を行うことや、経済成長を高めて税収を増やすことによって、新たな負担無しに財源が調達できるように見える。しかし、これまでも無駄な政策を削減するということは行われてきたはずだ。無駄に見える政策は誰が見ても明らかに無駄というものばかりではなく、それが必要だという人がいるものも多い。無駄の削減からどの程度の財源をひねり出せるのかは定かではない。また経済成長を高めるという努力も昔からしてきたはずで、ここに来て成長を高める画期的な方策が見つかったわけでもない。経済成長でパイを大きくすることに、どこまで期待して良いのかもはっきりしない。政策は将来に希望や夢を与えてくれるものでなくてはならないが、国民に甘い幻想を抱かせることとは別物だ。
レストランで料理を注文するときには、値段を見ずに美味しそうなものを何でも注文したりはしない。自分の財布の中身と相談して何を食べるかを考えるだろう。総選挙では自分が選択しようとしている政策メニューの料金がいかほどなのか、良く確かめてから注文することをお勧めしたい。
レストランで料理を注文するときには、値段を見ずに美味しそうなものを何でも注文したりはしない。自分の財布の中身と相談して何を食べるかを考えるだろう。総選挙では自分が選択しようとしている政策メニューの料金がいかほどなのか、良く確かめてから注文することをお勧めしたい。
(2009年08月03日「エコノミストの眼」)
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