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- 法人企業統計09年1-3月期~製造業が初の赤字に
■見出し
・製造業が初めて赤字に転落
・製造業、非製造業ともに設備投資の減少幅が拡大
・1-3月期のGDPは1次速報とほぼ変わらず
■introduction
財務省が6月4日に公表した法人企業統計によると、09年 1-3月期の全産業(金融業、保険業、金融機関を子会社とする純粋持株会社を除く、以下同じ)の経常利益は前年比▲70.1%(08年10-12月期:同▲64.6%)と、7四半期連続の減少となった。
原油をはじめとした資源価格の下落により変動費の減少幅が拡大(10-12月期:前年比▲10.5%→1-3月期:同▲19.2%)し、人件費などの固定費も前年比▲15.2%(10-12月期:同▲4.9%)と大幅に減少した。しかし、海外経済の悪化を背景とした輸出の急減や国内需要の落ち込みから売上高の減少ペースが加速(10-12月期:前年比▲11.6%→1-3月期:同▲20.4%)したため、減益幅は前期よりも拡大した。製造業の経常利益は▲2.2兆円となり、1954年4-6月期の統計開始以来、初の赤字となった。非製造業は前年比▲24.0%(10-12月期:同▲36.1%)と6四半期連続で減少したが、減少幅は前期よりも縮小した。
季節調整済の経常利益は、全産業が4.1兆円(製造業:▲1.5兆円、非製造業:5.6兆円)となった。全産業の経常利益は、季節調整値が公表されている1985年4-6月期以降では最低、ピーク時(07年1-3月期の15.6兆円)に比べると約4分の1の水準となった。
この結果、08年度の経常利益は前年比▲39.0%(07年度:同▲3.3%)となった。製造業が前年比▲65.5%(07年度:同▲1.4%)、非製造業が同▲18.0%(07年度:同▲4.7%)であった。
売上高経常利益率は全産業ベースで1.4%となり、前年に比べ▲2.1ポイントの大幅悪化となった。製造業が▲7.1ポイント、非製造業が▲0.2ポイントと特に製造業の悪化が顕著となっている。人件費、売上原価などのコストは大幅に減少しているものの、売上高の減少ペースがあまりに急激であったため、利益率の大幅悪化を余儀なくされた。
1-3月期の製造業の経常利益が赤字に転落した主因は、海外経済の悪化を背景に輸出が急速に落ち込んだことである。貿易統計の輸出金額は10-12月期の前年比▲23.1%から1-3月期には同▲46.9%へと減少幅が拡大した。これに伴い、製造業の売上高も10-12月期の前年比▲16.3%から同▲31.4%と減少ペースが加速した。
ただし、輸出動向を月次ベースで見ると、2月に前年比▲49.4%まで落ち込んだ後、中国を中心としたアジア向け輸出の持ち直しなどから、4月には同▲39.1%まで減少幅が縮小している。4-6月期以降は、輸出の減少による収益の下押し圧力は徐々に緩和されることが見込まれる。企業が人件費などのコスト削減を進めていることも収益の改善に寄与するため、経常利益は4-6月期以降、持ち直しに向かい、10-12月期には前年比で増加に転じる可能性が高いだろう。
経常利益の内訳を業種別に見ると、製造業は18業種中14業種が赤字となった。特に赤字幅が大きかったのは、輸送用機械(▲7,849億円)、情報通信機械(▲5,082億円)、電気機械(▲2,660億円)で、この3業種で製造業全体の赤字(▲22,462億円)の約7割を占めた。
非製造業は、運輸は赤字に転落(▲774億円)したが、建設が前年比30.5%の高い伸びとなったほか、原燃料費高騰によるコスト増から赤字が続いていた電気は、昨年夏場以降の原油価格下落の効果が表れ、6四半期ぶりに黒字に転換した。
労働分配率(当研究所による季節調整値)は72.2%となり、過去最高水準となった10-12月期の71.4%からさらに上昇した。非製造業は若干低下(10-12月期:70.2%→1-3月期:69.5%)したものの、製造業が10-12月期の74.2%から79.1%へと急上昇した。
製造業の労働分配率は02年以降の戦後最長の景気回復局面で大きく低下したが、この1年間で20%ポイント以上の急上昇となった。人件費は前年比▲31.6%と大きく減少しているが、収益の悪化ペースがそれを大きく上回っているため、労働分配率はかつてないスピードで上昇している。企業はすでに雇用、賃金の削減を行っているが、今後削減ペースは一段と加速する可能性が高い。
(2009年06月04日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1836
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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