2009年01月16日

急減速する中国経済~政策効果で底割れは回避

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

このレポートの関連カテゴリ

文字サイズ

  1. 中国経済の昨年10~12月期の成長率は、雇用確保の観点から必要水準とされる8%を割り込んだ模様である。このため、2008年の年間の成長率も9%程度に鈍化、水準こそ高いが、2007年の13.0%から大きく低下しそうだ。
  2. 景気の急減速に対応し、リーマン・ショック後、金融面では合計5回216bpの利下げと預金準備率の引き下げ、貸出総量規制の撤廃、財政面では総額4兆元(56兆円、対GDP比16%)という大規模な景気対策と、政策フル動員で景気底割れ回避に動いている。
  3. 2009年の中国経済の成長テンポは、輸出環境悪化による下押し圧力を、政策の下支えによってどの程度緩和できるかにかかっている。輸出環境に関しては明るい材料は少なく、かなり厳しい調整圧力を想定せざるを得ないが、景気対策に一定の効果が期待され、追加的な政策対応の余地もある。
  4. これらを勘案すると、2009年の中国は、成長率が8%を下回るものの、底割れは回避できるだろう。過度の輸出依存と貿易不均衡、地域格差の是正の半面、投資偏重は続く見通しだ。地域格差の是正や環境対策、民生向上に資する投資や中小企業に資金が配分されるよう十分に目を配ることが望まれよう。
38033_ext_15_1.jpg

(2009年01月16日「Weekly エコノミスト・レター」)

このレポートの関連カテゴリ

Xでシェアする Facebookでシェアする

経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

経歴
  • ・ 1987年 日本興業銀行入行
    ・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
    ・ 2023年7月から現職

    ・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
    ・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
    ・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
    ・ 2017年度~ 日本EU学会理事
    ・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
    ・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
               「欧州政策パネル」メンバー
    ・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
    ・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
    ・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【急減速する中国経済~政策効果で底割れは回避】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

急減速する中国経済~政策効果で底割れは回避のレポート Topへ