2008年10月27日

G7緊急共同声明(10/27):円高に対し日本から各国へ呼びかけ

総合政策研究部 常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任 矢嶋 康次

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■introduction

10月27日、G7は円高が急激に進んでいることを受け、「円の過度の変動並びにそれが経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることを懸念している。我々は、引き続き為替市場をよく注視し、適切に協力すると」とする共同声明を発表した。共同声明で円に言及するのは、2000年1月に東京で開いたG7会議で「円高懸念の共有」を盛り込んだ声明以来となる。
円ドルレートは、先週後半3日間で10円も円高が進んでいるなど、「独歩高」の状況になっている。中川財務金融相は、共同声明は日本側から各国へ呼びかけたと述べている。
今回の声明は円高のスピードを一時的に和らげ得るという点では効果がありそうだが、円高のトレンドを変えるという力はないだろう。かといって追加的な策があるかといえば、その点でもかなり追い込まれているというのが現状だ(だからこそ、日本側から各国に呼びかけたということだろう)。
追加策としては、利下げと介入が考えられる。
日銀の利下げについては、市場が本格的に織り込んでいるわけではないので、利下げ実施は短期的には相当インパクトがありそうだ。ただし、今後米、欧州などは引き続き大幅な利下げを実施してきそうで、金利差から円が相対的に有利な状況はさらに強まる。円高のトレンドを変えるというわけにはいかないだろう。
また介入だが、実施したとしても金利差、金融システムの相対的な状況から円高が止まるかどうかもわからない。実施に当たっては「大規模かつ長期化」のリスクをある程度覚悟せねばならない。そうなると今回共同声明とはなったが、各国協調で介入が大規模で長期間行われるのか、現時点では不透明といわざるを得ない。中川財務金融相は、会見で介入について「対応策が何かについては、市場の動きを見たうえで判断したい」と明言を避けたようだ。
筆者自身は円高が止まらない場合、利下げと介入がセットで実施されると予想する。短期的に介入の可能性が高まるのか、FOMCでの利下げ幅(29日)や、米7-9期実質GDP(30日)が市場予想を上回るか、などが注目だ。

(2008年10月27日「経済・金融フラッシュ」)

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総合政策研究部   常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任

矢嶋 康次 (やじま やすひで)

研究・専門分野
金融財政政策、日本経済 

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