2008年08月08日

景気減速とインフレ圧力に直面するアジア経済

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

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  1. アジア経済は、世界的な金融市場の混乱、米国経済の失速にも関わらず、輸出先の分散と内需の堅調により持ちこたえてきたが、世界的なエネルギー・食糧価格の高騰でインフレが加速、内需減速の兆候が現れ始め、輸出拡大の持続力にも陰りが出てきた。
  2. アジア通貨・金融危機やITバブル崩壊後の局面では、原油価格下落と通貨減価がアジアの回復を手助けしたが、足もとは国際商品価格の高騰でインフレが加速、景気減速懸念はあっても金融は引き締めざるを得ず、通貨減価は輸入インフレ加速のリスクを伴う。
  3. 為替制度や国際収支の面から見てアジアで通貨・金融危機が再燃するリスクは低いが、組立加工貿易を成長の柱とするアジアは資源高の影響を受け易いため、先行き調整色を深めることは避けられず、国ごとの対応力の差も目立ってきそうだ。
  4. アジアからの調整圧力が日本に波及する金融面でのリスクは低下しているが、貿易、現地法人の収益を通じた影響力は高まっている。通貨の暴落を伴ったアジア通貨・金融危機、輸出製品の供給過剰が生じたITバブル崩壊後、日本は景気と物価の両面で下押し圧力を受けたが、今回は景気下押しと同時に物価には押し上げ圧力を受けることになるだろう。



図1
図2
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経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

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