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ここで説明するまでもなく、バブルについては、古くはオランダのチューリップ、バブルの語源ともなった英国の南海泡沫事件(the South Sea Bubble)、日本では1980年代後半からの資産バブルといったように、枚挙に暇がない。ちなみに、日本の資産バブルの崩壊は、その整理に「失われた10年」と呼ばれる長い年月を必要とすることとなった。例えば、市民になじみ深い日経平均株価指数は、途中の反騰・反落を交えつつも1989年のピークから2003年のボトムまで下げ続け、その後回復過程にあるとはいえ、現時点でもバブル期ピークの半値以下の水準だ。
人類がバブルに直面したときに、同じことを繰り返してしまうのは何故かという問いに対する答えは、人間の心理的な特性が今も昔もあまり変わっていないところにあるのかもしれない。
バブルの真只中では、特定の物の価格が上昇し続ける。それは、チューリップの球根であったり、土地であったり、株式であったりと対象物は様々であるとしても、共通しているのは価格が上がり続けることである。この過程では、理論的に説明可能なフェアバリュー(適正な価格)などは、あっという間に通過してしまう。
もっとも、フェアバリューといっても実は内容は多岐に亘る。株価を例にとれば、そのフェアバリューには、企業の資産価値から見るアプローチ、企業が将来産み出すであろうキャッシュフローの割引現在価値から見るアプローチ、あるいは、複数の説明変数から重回帰的に見て行くアプローチといったように、様々なアプローチがある。それぞれからバラバラなフェアバリューが算出されてくるのが実情だ。
バブルの局面では、価格帯が上方に離れ過ぎて、これらのフェアバリューは参考にならなくなる。投資家の心理は、「今日の値段より明日の値段のほうが高いと思うから買う」というロジックに急速に傾く。投機の場面では、価格の上昇が何時まで続くのか、どこまで続くのかが分からない状況下での心理戦が展開される。価格上昇トレンドが続く限り、恐怖心から早く降りた者が敗者となる。臆病者がふるい落とされる「チキンレース」が展開される。
しかし、あるとき、価格が上昇力を失って下落に転じると、バブルは崩壊に向かって突き進む。こうなると、かつて臆病者と言われた人が賢者へと評価が変わることさえ出てくる。バブルに最後まで付き合った多くの参加者が持っていた「自分だけは逃げ出せる」と言う密かな自信が打ち砕かれるときがやってくる。
投機だけでなく実需の動きも色濃く反映する現在の原油、貴金属、穀物などの相場急騰を皆さんはどのようにご覧になりますか。
(2008年05月30日「研究員の眼」)
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