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- 5月BOE金融政策委員会~流動性支援策の効果を見極め
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■見出し
・見送られた連続利下げ
・今のところ限定的な流動性対策の効果
■introduction
5月7日、8日に開催されたイングランド銀行(以下、BOE)の金融政策委員会(MPC)は、4月に続く連続利下げの見送りを決めた(図表1)。
4月の25bp利下げは9名の委員のうち6名が賛成、残りの3名のうち2名は、「早期の利下げがもたらすインフレ期待高止まり」への警戒感から据え置きを主張していた。その他、ハト派のブランチフラワー委員は、「金融・不動産市場の悪化は米国同様に景気全般の悪化を示すシグナルであり、名目賃金の伸びの鈍化からインフレ率の上振れは短期的なものに留まる」(注)として50bpの利下げ票を投じていたことがわかっている。
先月のMPC以降、懸案となっている住宅関連指標は価格、取引、ローンのいずれの面でも軟調が続き、1~3月期の金融業の牽引力の低下による成長率の鈍化(前期比0.6%→同0.4%)も確認されたが(図表2)、今回は、先月21日に導入された流動性対策(次項参照)の効果と過去の利下げの浸透度合いを見極めようとの判断が多数を占めたことが推測される。
今回のMPCは、「インフレ報告」の最新号における包括的な分析が議論のベースとなっている。前回の2月号では、当時市場が織り込んでいたとおり、政策金利を年末までに4.50%まで引き下げた場合、中期的にもインフレ目標の2%を上回る状況が続くとして連続利下げや大幅な利下げに慎重な立場をサポートするものであった。2月以降、エネルギー価格高とポンド安の進行により物価上押し圧力は強まる一方、信用市場や住宅市場、サ-ベイ調査は弱含んだが、今回の据え置きは、前回の「インフレ報告」での想定から大きく外れる動きとはなっていないと判断されたことを示唆するものでもある。
なお、インフレ報告5月号は、今月14日、今回のMPCの議事録は21日に公開、次回のMPCは6月4日、5日に開催される。
(注) ブランチフラワー委員(米国ダートマス大学経済学部教授)は、4月29日に行った講演で、2006年1月に住宅価格の鈍化が始まってから4つの局面を経て米国の景気は悪化したが、イギリスも2008年2月に住宅市場の調整深化が雇用・所得面に影響を及ぼす第3局面に入っており、信用市場の危機が景気後退のスパイラルの引き金となることを回避するために思い切った利下げをすべきと語っている。
(2008年05月09日「経済・金融フラッシュ」)
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- ・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職
・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員
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