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- 福井総裁後任人事案提示、最後の決定会合(3月)
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■見出し
・総裁後任の人事案提示:民主党に対して直球勝負、バランスのとれた人選
・3月決定会合・金融経済月報:現状判断を下方修正、景気減速を明示
・定例記者会見:好循メカニズムは少し弱ってきている
■introduction
政府は7日、3月19日に任期満了を迎える日銀総裁・副総裁の後任として、武藤敏郎副総裁(64)を総裁に昇格、副総裁には元日銀理事の白川方明氏(58)、経済財政諮問会議の民間議員を務める伊藤隆敏東大教授(57)を起用する人事案を国会に提出した。
・バランスを考えた人事案
武藤副総裁、白川方明・元日銀理事については事前に報道されていたが、伊藤隆敏・東大教授は報道されていなかったため意外感が多少ある。ただ3人のバランスを見ると非常によく考えられた案だと感じる。
武藤副総裁は現在の金利正常化の路線上の考えだ。そこに政策の考え方は福井総裁よりも多少タカ派とみられる白川方明・元日銀理事(日銀内では企画部門が長く金融政策に精通した理論派。現在の金融政策の枠組みである「2つの政策の柱」「物価安定の理解」を打ち出したといわれている)。もう一人の伊藤隆敏・東大教授はインフレターゲットを主張し、これまで日銀の政策に対して批判的であり、ハト派的な位置づけとなる。武藤副総裁を挟んで2人の副総裁が対立する軸となりタカ・ハト派のバランスが3人の中で取れている。
また伊藤隆敏・東大教授は国際的に高く評価されている経済学者でもあり、武藤副総裁の不足面を補うという点でもかなり考えられた人事案と評価できる。
・金融政策運営への影響
この3人となった場合の政策運営は基本的には現状と変わらない。すなわち「状況次第」ということになりそうだ。日本経済は4-6月正念場を迎えそうで、現状維持を継続するのか、利下げ行うのかの選択を迫られ、新体制は船出と同時に難しい舵取りが要求されそうだ。
ただ「中長期的な物価安定の理解」の数値が変わる可能性がある。
インフレターゲットを主張する伊藤隆敏・東大教授は「インフレターゲティング」(日経新聞2001年、P17)でインフレターゲティングの具体的提案として「たとえば2年後に消費者物価指数(除く、生鮮食品)のインフレ率を1-3%の範囲」と記している。
日銀の現在の「中長期的な物価安定の理解」は、「消費者物価指数の前年比で0-2%程度の範囲内にあり、委員毎の中心値は、大勢として、概ね1%の前後で分散している」となっている。この上限の2%を提示しているのは、おそらく岩田副総裁であるが、伊藤隆敏・東大教授が副総裁となった場合、この上限、平均値が上方に変更される可能性はある。
(2008年03月07日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1837
- ・ 1992年 :日本生命保険相互会社
・ 1995年 :ニッセイ基礎研究所へ
・ 2021年から現職
・ 早稲田大学・政治経済学部(2004年度~2006年度・2008年度)、上智大学・経済学部(2006年度~2014年度)非常勤講師を兼務
・ 2015年 参議院予算委員会調査室 客員調査員
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