コラム
2007年11月08日

次世代法とCSR経営 -「地域が支える」子育て支援

土堤内 昭雄

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平成15年3月に「次世代育成支援対策推進法」(以下、次世代法)が成立した。次世代法は急速な少子化がわが国の経済社会に大きな影響を与えるという認識から、政府、地方公共団体、企業等が一体となって次世代育成支援に取り組むものである。

次世代法では国や地方公共団体などの特定事業主と、301人以上の労働者を雇用する一般事業主は、平成16年度末までに次世代育成支援のための行動計画を策定することが義務付けられた。行動計画の策定にあたっては、基本的な視点として「仕事と子育ての両立支援」に加えて、「社会全体による支援」や「地域における子育て支援」が挙げられている。

平成19年9月末現在の届出状況は、全国の301人以上企業の97.6%にあたる12,961社が提出済みである。策定した当該計画の目標を達成するなど一定の基準を満たした企業は、厚生労働大臣から次世代育成支援事業主として認定され、認定マーク(愛称「くるみん」)を広告、商品、求人広告等につけることができる。平成19年9月末現在では393社の認定申請があり、審査中が16社で、既に366社が認定を受けている。

認定条件は、育休の取得しやすさや短時間勤務制度など職業生活と家庭生活の両立支援などの雇用環境の整備が中心になっているが、このような認定基準を企業のCSR経営の観点から考えてみよう。CSR経営は企業を取り巻くステークホルダーに対して本業を通して社会的責任を果たすことである。次世代法の認定基準では、「従業員」というステークホルダーに対する両立支援が重要な条件と考えられている。

企業にとっては、「地域」も重要なステークホルダーのひとつだ。したがって、「地域の子育て支援」も大きな社会的責任といえる。しかし、次世代法の認定基準では、「地域の子育て支援」だけでは認定事業主にはなれない。つまり、「従業員」の両立支援を行うファミリー・フレンドリー企業という性格が前提となっているのだ。

>次世代育成支援とは、行動計画の策定指針にも示されているように、社会全体が次世代を育成支援することである。したがって、企業の役割は「従業員」への直接的な両立支援とともに、「地域の子育て支援」がもっと評価されるべきだろう。何故なら子育て「従業員」のいない企業にとっても、CSR経営という観点からは、次世代育成支援は極めて重要なテーマであるからだ。「地域が支える」子育て支援に寄与する企業は、より本質的な次世代育成支援企業ではないだろうか。
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土堤内 昭雄

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