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- 10月展望レポート(10/31)~下ぶれリスクは高まるも景気回復・物価上昇シナリオは維持
■見出し
・展望レポート(基本的見解):4月との比較
■introduction
10月31日公表の展望レポートは、景気・物価情勢の見通しについて概ね前回4月展望レポートの延長線上の見方が示された。すなわち先行きについては、息の長い拡大を続け、物価も次第にプラスになるとの見方である。
政策委員9人による見通し数値はほぼ事前のコンセンサス通りの内容となった。実質GDPの予想中央値は2007年度を前回(4月)2.1%から1.8%に下方修正、2008年度は前回と同じ2.1%に据え置いた。消費者物価指数は、2007年度を前回0.1%から0.0%、2008年度を前回0.5%から0.4%に下方修正した。
景気については「住宅投資の振れが07年度の成長率を幾分下押しする一方、08年度の成長率を幾分押し上げるとみられる」とした上で、「成長率の水準はならしてみると潜在成長率を幾分上回る2%程度で推移する可能性が高い」、物価については「上昇基調を続けると見られる」との見方を示している。
福井総裁は会見で、今後の金融政策運営について「日本経済が物価安定のもとでの持続的成長軌道をたどる蓋然性が高いことを確認し、リスク要因を点検しながら、経済・物価情勢の改善度合いに応じたペースで徐々に金利水準の調整を行う」との考えを改めて示した。
・今後の政策の論点:コストプッシュインフレと国内の景気鈍化
委員の予測数値には幅はあるとしても、2007年度のコア消費者物価指数の予測で全員がプラスを予想している。コア消費者物価指数は、4月から9月分の6ヶ月間、▲0.1%となっており、年度後半ゼロを上回るとの見方だ。
原油価格の高騰を受けコアCPIは早ければ10月分からゼロないしプラスになってくる可能性がでている。
物価状況が改善すること自体は日銀の利上げにとってはサポート材料となりうるが、足元の物価改善の動きは、景気回復が長期にわたり需給環境の改善が続いていることよりは、原材料高騰といったコスト・プッシュ・インフレーションの色合いが強く、日本経済にとって健全なものとは言い難い。
原材料の高騰は、新興国の経済発展にともなった実需で価格が上がっており、日銀が利上げをしても、すぐ原材料高騰の流れが変わるということは期待しにくい。家計、企業の状況が大きく変わる可能性は小さく、一方で賃金低迷、大企業と中小企業の格差、地方の疲弊などに対して利上げのマイナス面が目立つ可能性すらある。
日銀としては、日本経済が「持続的な成長軌道を辿る蓋然性が高いことを確認し、金利水準の調整を行う」という金利正常化のロジックに沿って利上げの必要性を市場と対話することになるだろうが、先行き景気回復が続き、ディマンド・プルによるインフレ圧力が高まるとの自信・確信が必要となる。
今回の展望レポートは、足元のダウンサイドリスクが前回4月に比べて強まっている。福井総裁も会見で「世界経済に不確実性が生じている。下ぶれリスクは高まっている」とした。筆者は、下ぶれリスクについて米国経済・国際金融市場の混乱という要因とともに、国内要因もダウンサイドを意識した文面になっていると感じた。とくに家計部門、中小企業、賃金の弱さというキーワードが目立っている。
国内の状況を見ると、設備投資の頭打ち、賃金・消費の低迷、さらに改正建築基準法の影響が住宅投資を予想以上に落ち込ませており、日銀のシナリオである「緩やかな回復」のモメンタムが落ちてきていることも否定できなくなってきている。
当面最大の注目点は、米国経済・国際金融だが、今年2月の利上げの際にも論点となった国内経済、特に賃金・消費動向が利上げ判断を大きく左右する展開となるだろう。
(2007年11月01日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1837
- ・ 1992年 :日本生命保険相互会社
・ 1995年 :ニッセイ基礎研究所へ
・ 2021年から現職
・ 早稲田大学・政治経済学部(2004年度~2006年度・2008年度)、上智大学・経済学部(2006年度~2014年度)非常勤講師を兼務
・ 2015年 参議院予算委員会調査室 客員調査員
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