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- 中国1~9月期経済実績~7~9月期も11.5%の高成長~
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■見出し
・成長率は3期連続で11%台、物価は年間目標を上回る推移
・追加の金融引締めは濃厚ながら、抜本的政策転換は見込めず
■introduction
・高まる5年連続の二桁成長の可能性
10月25日に中国国家統計局が公表した7~9月期の実質GDP成長率は前年同期比11.5%であった。4~6月期の同11.9%は下回ったものの、今年に入って11%台の成長が3期続いている。
1~9月期の成長率も、前年同期比11.5%と、2006年1~9月期の同10.8%を上回っている。2007年の年間成長率も11%台となり、5年連続での二桁成長、6年連続の成長加速となる可能性は高まっている。
・サービス業の成長や消費の伸びは加速、投資の伸びは高水準で鈍化
1~9月期の成長率は、第一次産業が前年同期比4.3%、第二次産業が同13.5%、第三次産業が同11.0%となっており、製造業牽引の構図には変わりがない。しかし、前年同期の4.9%、13.3%、9.5%と比べると、農業が低下、製造業がおむね横這いとなる中で、サービス業の成長の加速ぶりが目立つ。
その他の1~9月期の主要指標を前年同期と比べると、工業生産が前年同期比18.5%で同17.2%から加速、消費の指標である小売売上高は同15.9%で同13.5%から加速する一方、固定資産投資は同25.7%で高水準ながらも、同27.3%から鈍化した。
固定資産投資は、都市部では同26.4%、農村部が同21.2%となっており、地域別には東部(沿海部)が21.4%と最も低く、中部が同36.2%、西部が同29.6%と地域格差是正への動きが見られる。一方、過剰投資が懸念される不動産投資は、同30.3%と加速感が見られる。
なお、9月単月の伸びと1~9月期実績を比較すると、工業生産が前年同月比18.9%、小売売上高は17.0%と上回る一方、都市部固定資産投資は同24.8%で下回っている。
・都市と農村の所得格差は緩やかな是正
所得面では1~9月の都市住民の可処分所得の伸びが実質前年同期比13.2%、農村住民の純収入が同14.8%となっており、それぞれ前年同期を3.2%ポイント、3.4%ポイント上回った。
所得格差は、都市住民の可処分所得10,346元に対して、農村部の純収入は3,321元と依然3倍を超えるものの、農村所得引き上げのための政策対応の進展もあり、格差の拡大には歯止めがかかっている。
・1~9月期の消費者物価上昇率は4.1%で年間目標3.0%を上回る
消費者物価の上昇率(以下、CPI)は、豚肉を中心とする食品価格の高騰により8月に前年同月比6.5%まで高進、9月は同6.2%まで鈍化したものの、なお高い水準で推移している。こうした年央以降のインフレ加速で、1~9月期のCPIは前年同期比4.1%となっており、年間目標の3.0%を大きく上回った。
・高水準の外貨流入も続く
輸出は1~9月期で前年同期比27.1%と前年並みの高い伸びを維持、貿易黒字は累計で1857億ドルとなり、過去最高となった2006年の年間実績(1775億ドル)を上回った。近年の投資ブームによって、輸出生産能力が増強、輸入代替が進展したことに加え、人民元の切り上げ期待と産業構造の最適化と貿易摩擦の緩和の両面から強化されている輸出抑制策が、輸出前倒しと輸入抑制効果を持ったことも貿易黒字拡大の原因と考えられる。
対内直接投資の実行額も、1~9月期の累計で472.2億ドルと前年同期比10.9%と拡大基調が続いている。高水準の外資流入による人民元高圧力を緩和するための介入によって、9月末の外貨準備高は、前年同月末から4457億ドル増加、1兆4336億ドルとなった。
(2007年10月25日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1832
- ・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職
・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員
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