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コラム
2007年10月15日
1.大幅減少となった住宅着工戸数
耐震偽装事件を発端に建築基準法が改正され、6月20日から施行された。欠陥建築物の除去を目指して、構造計算のチェックが厳格化され、建築確認の審査や検査も厳格化された。現場では準備不足もあっで、建築確認審査が長期化し、住宅着工戸数は大きく減少している。サブプライムローン問題に隠れてあまり注目されていないが、この影響は今後の景気動向にとって大きな懸念材料である。7月の新設住宅着工戸数は、前年同月比マイナス23.4%の大幅な減少となり、8月はマイナス43.3%とさらにマイナス幅が拡大している。年率換算の季節調整済み着工戸数も、7月は94.7万戸、8月は72.9万戸という低水準に低下してしまっており、住宅投資がしばらく落ち込むことは避けられない。
2.懸念される設備投資への影響
さらに、建築基準法改正の影響は住宅投資のみにとどまらず、民間企業の設備投資にも及ぶ恐れがある。非居住用建築物(事務所や店舗、工場、倉庫)の着工床面積は前年同月比マイナス42.4%と、7月のマイナス21.3%に続いて大幅な減少となっている。住宅だけでなく、企業の建設投資に影響が出ることも避けられないだろう。
日銀短観9月調査では、企業の設備投資意欲が依然として堅調であることが確認された。しかし、工場や店舗の建設が予定通りできなければ、工場に設置する予定の機械設備等の納入時期も遅らせざるを得ない。最悪の場合には、ビジネスチャンスを失って、投資計画自体が断念されることもあり得るだろう。こうして建設投資の遅れが、機械などの受注・生産に波及して行く恐れもある。
日銀短観9月調査では、企業の設備投資意欲が依然として堅調であることが確認された。しかし、工場や店舗の建設が予定通りできなければ、工場に設置する予定の機械設備等の納入時期も遅らせざるを得ない。最悪の場合には、ビジネスチャンスを失って、投資計画自体が断念されることもあり得るだろう。こうして建設投資の遅れが、機械などの受注・生産に波及して行く恐れもある。
3.注目される円滑化策の効果
国土交通省は、建築確認申請手続きの円滑化のために、説明会の開催やアドバイザーの確保などの措置を打ち出している。国土交通省が発表した建築確認件数では、4-6月期の水準に比べて7月には大きく落ち込んでいるが、8月には小規模な建築物では元の水準に戻りつつある。しかし、設備投資にも関係が深いと考えられる大規模な建築物では状況はあまり改善していない。大規模な建築物(1~3号建築物)の建築確認件数は、4~6月には前年同月比は一桁台のマイナスであったのに対して、7月はマイナス49.5%に落ち込んだ。8月もこれからはマイナス幅は若干縮小したものの、依然としてマイナス43.5%という大幅減少が続いている。
対策が進めば審査も円滑化し、遅れていた建築工事も徐々に着工されることになるだろうが、一時的とはいえ工事が減少してしまう中小建築業者の資金繰りなどへの影響も懸念される。審査の遅れの影響が、どの程度今後の住宅投資や企業の設備投資に表れるのかは注視していく必要があるだろう。
対策が進めば審査も円滑化し、遅れていた建築工事も徐々に着工されることになるだろうが、一時的とはいえ工事が減少してしまう中小建築業者の資金繰りなどへの影響も懸念される。審査の遅れの影響が、どの程度今後の住宅投資や企業の設備投資に表れるのかは注視していく必要があるだろう。
(2007年10月15日「エコノミストの眼」)
櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)
櫨(はじ) 浩一のレポート
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