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コラム
2007年09月12日
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総務省の「社会生活基本調査」では、1日の生活時間を1次活動(睡眠、食事など生理的に必要な活動)、2次活動(仕事、家事など社会生活を営む上で義務的な性格の強い活動)、3次活動(これら以外の各人が自由に使える時間における活動)の3つに分類している。近年の生活時間における変化の特徴は、2次活動が減少し、3次活動が増加していることだ。
戦後の高度経済成長は長い労働時間によって支えられ、その結果、国民は趣味や娯楽、スポーツや旅行、学習や社会参加活動などの3次活動を行う時間は少なかった。しかし、社会が成熟化するとともに労働時間が短くなり、自由時間は長くなった。これまで 余った時間でしかなかった「余暇」は、むしろ生活を豊かで潤いがあるものにするためにきわめて重要な時間となった。
一方、日本人の平均寿命は戦後間もない頃は短く、「人生50年」といわれていた。結婚し子どもを生み・育てるという人口の再生産が終わると人生の大きな役割が終わったのである。だから、その後の人生は 余った人生「余生」と呼ばれた。しかし、今や日本は世界一の長寿国となった。平成18年の簡易生命表によると、日本人の平均寿命は男性79.0年、女性85.8年で、「人生80年時代」を迎えている。したがって、これまで余生と考えられてきた人生の時期は30年以上にもおよび、それは決して人生の 余った部分ではなくなり、むしろきわめて重要な人生の収穫期になっている。
直木賞作家である重松清さんの「定年ゴジラ」という作品のなかには、定年になったサラリーマンが次のように語る場面がある。「『余生』って嫌な言い方だと思わないか。余った人生だぜ? ひでえこと言いやがるな、昔の奴は。でも、うまいこと言うもんだよ。余りだ、余り、俺たちがいま生きてるのは、自分の人生の余った時間なんだよ。そんなの楽しいわけないよな」(重松清著・講談社文庫「定年ゴジラ」より)
このように一日の生活時間をみても、長くなった人生をみても、これまで“余り”と思われていた部分が、いま、実は非常に大事な時代になっているのである。「余生」を人生の 余った時間と捉えていては、確かに面白いわけがないのである。そこで、“余り”の部分をむしろ肝心な部分と考える意識転換が必要ではないだろうか。充実した「余暇」を過ごすために睡眠や仕事といった1次、2次活動があり、人生の収穫期である「余生」を豊かに暮らすためにそれまでの生活が重要だという発想である。このように生活時間や人生の重心を少し変えてみると、そこにあなたらしい新たなライフデザインが見えてくるかもしれない。
戦後の高度経済成長は長い労働時間によって支えられ、その結果、国民は趣味や娯楽、スポーツや旅行、学習や社会参加活動などの3次活動を行う時間は少なかった。しかし、社会が成熟化するとともに労働時間が短くなり、自由時間は長くなった。これまで
一方、日本人の平均寿命は戦後間もない頃は短く、「人生50年」といわれていた。結婚し子どもを生み・育てるという人口の再生産が終わると人生の大きな役割が終わったのである。だから、その後の人生は
直木賞作家である重松清さんの「定年ゴジラ」という作品のなかには、定年になったサラリーマンが次のように語る場面がある。「『余生』って嫌な言い方だと思わないか。余った人生だぜ? ひでえこと言いやがるな、昔の奴は。でも、うまいこと言うもんだよ。余りだ、余り、俺たちがいま生きてるのは、自分の人生の余った時間なんだよ。そんなの楽しいわけないよな」(重松清著・講談社文庫「定年ゴジラ」より)
このように一日の生活時間をみても、長くなった人生をみても、これまで“余り”と思われていた部分が、いま、実は非常に大事な時代になっているのである。「余生」を人生の
(2007年09月12日「研究員の眼」)
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