2006年09月01日

金融政策・市場の動き~CPIショックで年内利上げ観測が大きく後退

総合政策研究部 常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任 矢嶋 康次

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  1. 今回のCPIの基準改定(8/25)で明らかになった物価上昇率の水準により、日銀は追加利上げをしにくくなったことは事実。利上げの根拠として主張してきた「実質短期金利マイナス」という説明が今回の基準改定で、実質短期金利が足元ほぼゼロ領域となり、次回の利上げへの理論武装には使えなくなった。
  2. 日銀の金融政策は、量的金融緩和解除以降、先見的(forward looking)な総合判断にシフトした。もともと日銀には過剰流動性の縮小を進めなくては将来のバブルを引き起こすとの見方が根本にはあり、たとえ物価が大きく上昇していなくとも、景気実勢が許す限り流動性の縮小を進める立場だ。今後は、物価動向よりも景気実勢や貸出市場の動向などを踏まえた、総合判断の色合いをさらに強めていくことになるだろう。
  3. 長期金利は、CPIの発表をきっかけに水準感が変わっている。今後、(1)米国長期金利の低下傾向、(2)9月の国債大量償還で良好な需給環境などから金利低下圧力が強く、金利上昇のきっかけは、9月末のコアCPIが上昇ピッチを早める場合や、10月2日の短観などのイベントを待たなければならない。
  4. 円ドルレートは、(1)日本の利上げ観測が早期に醸成されない、(2)逆に米国の追加利上げ期待が今後もくすぶる、(3)中東情勢など地政学リスクの高まり、などからドルの底堅い展開が続こう。その後9月のG7、11月の米国中間選挙で対外不均衡の問題が取り上げられ緩やかに円高トレンドに。景気減速を受けFRBの利下げ観測が強まるだろう年末にかけては、円高ピッチが一段と加速するだろう。
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総合政策研究部   常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任

矢嶋 康次 (やじま やすひで)

研究・専門分野
金融財政政策、日本経済 

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