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■目次
1.厚生年金改革の概要
2.2つの約束
■introduction
今般、年金関連法が改正された。従来までの改正では、年金財政が悪化する度に保険料率を引き上げ、年金財政の均衡を保とうとしてきた。改正が行われる度に、これで将来は安心と思いきや、保険料や年金支払額の前提となる人口予測や経済予測が実際には悪い方に外れてしまい、制度改正を繰り返してきた。また昨今の少子高齢化の進展により年金受給者は増えるが、支え手である被保険者は減少するため、将来の年金財政の悪化は誰の目にも明らかとなり、それが年金不信につながっている。
財政が悪化したからといって、このまま保険料を引き上げる政策を続ければ、将来の保険料負担は非常に大きなものとなる。いったい、どこまで保険料が高くなるのであろうか?保険料を払っても、年金を受給できる年齢になる時まで年金制度は維持できているのだろうか?といった年金に対する不信感が大きくなり、保険料の未納問題が深刻となっている。
このような問題に対処すべく、今度の年金改正法では「保険料固定方式」と「マクロ経済スライド」という、これまでにはない新しい方式が導入された。「保険料固定方式」とは、簡単に言えば、保険料の上限を定めることである。保険料を現在の13.58%から段階的に引き上げ、2017年以降は18.3%で固定することになった。18.3%が高いか安いかという問題は別にして、“将来の保険料が、どのくらい高くなるか?”といった不安を払拭する狙いである。
保険料の上限を固定すると、年金財政を安定化させるためには支出の削減以外に方策はない。そこで「マクロ経済スライド」が導入された。これを簡単に言えば、被保険者(現役世代)数の減少率に合わせて年金額を削減することである。例えば既に年金の支給を受けている人の年金額(既裁定者年金額)は、これまで物価上昇にあわせて年金が毎年増額されていたが、改正後は、物価上昇により年金は増額されるが、増額率は削減される。マクロスライド期間中は毎年0.3%削減され、さらに被保険者数が減る分も削減されることになった。
ただし、減額には下限が設けられていて、物価上昇率がプラスである限り、それまで支給されている名目年金額は保障される。しかし物価上昇率がマイナスとなる場合は、物価下落分だけ年金額が減額となる。
またマクロ経済スライドによって、給付水準が大幅に低下することを避けるために「法案附則」という形で、給付水準の50%確保が明記された。
(2004年11月25日「基礎研マンスリー」)
北村 智紀
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