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- 中国引き締め策の対外的影響
2004年08月01日
- 中国の引き締め策の対外的な影響を考える際には、引き締めにあたって過熱業種を選別するアプローチが採られていることと、中国の輸入の約4割が輸出製品の組立加工に関わる部品、原材料であることに鑑み、貿易構造を吟味することが必要である。
- 4~6月期の投資関連統計からは、春先から強化された引き締め策が、かなりの即効性をもって投資抑制効果を挙げつつあること、選別的手法が講じられたことで、業種、地域、投資主体、投資計画の内容によって影響の度合いが異なっていることなどが分かり、中国経済に内在するアンバランスは改善に向かいつつあると言える。年後半には、引き締め効果の浸透で規制業種を中心とする投資の減速は一層明確になるものと予想される。
- 中国と主要な貿易パートナーである米国、日本、韓国、台湾の貿易統計からは、(1)米国市場では中国の躍進が目覚ましく、アジアは伸び悩んでいるが、アジアの輸出は中国向けの高い伸びに牽引されて拡大していること、(2)米国は、労働集約的製品と情報機器、民生用電気機器を中心とする中国製品の需要アブソーバーとなっており、中国は、日本、韓国、台湾からこれらの製品の製造に必要な素材・部品を調達していること、(3)急速に拡大した機械機器では、中国が米国に対して完成品を輸出し、アジアから基幹部品を調達するという分業が広がっていること、(4)アジア域内では価格帯で棲み分ける形での部品の相互融通が拡大していること、などがわかる。
これらの事実は、中国においては直接投資を通じて輸出製品の組立加工基地としての能力増強が進展し、米・日・東アジア間において産業内分業が進展しているとの見方を裏付けるものである。
- 貿易分析からのインプリケーションとして、中国の投融資抑制策は、素原材料への需要鈍化を通じて貿易相手国に影響を及ぼすであろうが、中国向けの輸出金額、あるいは対中輸出依存度が相対的に大きいアジアへの貿易を通じた影響は見た目ほど大きくはなく、むしろ米国の需要動向、特に、情報通信機器への需要の方が大きな影響力を持っていると考えることができる。
- 近年では、中国のWTO加盟後の段階的な市場開放の進展に対応して、従来輸出指向が強かったアジア企業の投資でも中国国内市場での販売を指向するウェイトが高まっている。これらの取り組みが奏功し、アジア企業にとって、中国が市場としての重要性を帯びてくれば、中国の内需変動の影響は必然的に大きくなってくるであろう。
(2004年08月01日「経済調査レポート」)
![](https://www.nli-research.co.jp/files/topics/43_ext_01_0.jpeg?v=1531973337)
03-3512-1832
経歴
- ・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職
・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員
伊藤 さゆりのレポート
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