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コラム
2003年01月27日
1.国内を5回も巡行した始皇帝 仕事の関係の本だけでも読みきれないので、日頃は小説などはほとんど読まなくなってしまったが、この正月は風邪で寝込んでしまったこともあり、寝正月を決め込んだ。読みかけの本やらもう一度読みたいと思った本など、久しぶりにゆっくりと本を楽しむことができた。歴史ものが面白く思えるようになったのは、年齢のせいだろうか。秦の始皇帝があの広い中国を5回も巡行したというのは驚きだったが、良く考えてみるとこれは紀元前210年のことだから、もっと驚きである。当時の日本はといえば、まだ縄文時代から弥生時代だ。 2.高まる元切り上げの圧力 さて、1990年代に入ってから物価上昇率が低下したのは、日本だけでなく世界的な現象で、この背景には中国からの安い製品が各国に流れ込んでいるという指摘もある。おまけに中国自体の物価も下落傾向にあって、輸出を通じて中国発のデフレが世界中にばらまかれているようにも見えるのである。 元を切り上げろという世界中からの圧力はどんどん高まるだろうが、当面中国は元の切り上げをなんとか回避しようとするだろう。国有企業の多くは、経営難に苦しんでおり、これが不良債権問題の温床となっているからだ。元が切り上がればこれらの国有企業の経営はますます苦しくなり、問題の処理がより困難になる。指導者の交代をスムースに行なおうという時に、いきなり難問を抱えるのは避けたいところだろう。 3.経済大国となる中国 しかし、もっと長い目で見れば元の切り上げは不可避だ。しかしそれはまた、問題の別の側面も浮かび上がらせる。中国の所得水準は急速に上昇しているが、元の増価がこれを加速するからだ。日本も一人当りGDPは1960年には477ドルで、米国の2,849ドルの6分の一に過ぎなかったものが、今ではほぼ同じ所得水準となっているが、これには1ドルが360円から最近の120円程度に、約3倍の価値となったことも大きく寄与している。 2001年の日本のGDPは中国の11,590億ドルをはるかに上回る41,757億ドルで米国の100,822億ドルに次ぐ経済大国である。2000年の中国の人口は12.8億人で日本の約10倍である。日本のGDPが中国を大きく上回るのは、一人当たりのGDPが日本の32,851ドルに対して、中国はこの30分の一以下だからだ。日本と中国の所得格差は次第に縮小し、10倍ほどになると中国の経済規模は日本を上回るようになる。そして、いずれ日中の人口規模の格差を反映して、中国のGDPが日本を上回るようになるだろう。 4.大国中国とどう付き合うか? 今後日本の人口が減少し、中国はしばらく人口の増加が続く。何倍もの所得格差がいつまでも続くという方が不自然であり、10倍以上の人口差が経済規模の差として表れるのはいかんともし難いだろう。21世紀の日本は人口の減少もあり、経済大国であり続けられるとは言い切れないだろう。また、世界史的にみても、長い歴史の中で先人達は大国中国との付き合い方に頭を悩ませてきたに違いない。長い歴史の中で多くの国がそうであったように、21世紀の日本も、あるいは世界各国が頭を悩ませる問題になるのかも知れない。 いずれにしても、経済大国として再び世界史に登場してきた中国との付き合い方を考えるに当たっては、長期的な時間軸の中で、戦略的な発想に基づいて、依存関係を構築していく姿勢が大切ではないだろうか。 |
(2003年01月27日「エコノミストの眼」)
櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)
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