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- 設備投資の日・米・NIES比較:日本型投資行動の解明
1993年05月01日
<要旨>
- 企業の行なう設備投資は、経済の需要と供給をつなぐ「連結環」として、これまでも経済発展に大きな役割を果たしてきた。しかし1980年代に入り、日本やアジアNIES等が設備投資主導で高い経済成長を持続したこと、さらに経済学の分野でも投資の外部経済効果が重視されるようになったこと等から、設備投資は従来以上に大きな注目を集めるようになった。また、国際的な相互依存の高まりの中で、対外不均衡や為替レー卜との関連からも、設備投資の役割が再考されつつある。
- こうした点を踏まえ、本論では日本の設備投資行動に関する基本的なファクト・ファインディングを行なうべく、日本を中心とする投資の国際比較を行なった。対象国としてはアメリカのほか、日本との関わりの深い韓国、台湾、及びアセアンの中心となりつつあるタイの5ヵ国をとりあげ、基本的な投資関連指標を用いて多面的な比較を試みた。こうした国際比較についてはデータ制約が大きいため、ここではアジアの発展途上3ヵ国について筆者らが推定して新しいストック・データを更に延長推計し、利用した。
- 先ず需要としての設備投資を見ると、日本は依然として国際的に高い投資率を維持しており、アメリカと好対照を見せている。その他の国については、韓国が70年代以降の工業化プロセスを通し、日本を上回る高い投資を続けてきたことが注目される。
資本係数については、高投資を背景に日本の係数が上昇を続け、80年代終盤にはアメリカを上回る水準に達している。これに対しアメリカでは、投資の長期的な低迷、とりわけ労働代替投資の低さを反映し、資本係数の顕著な上昇は見られない。その他の国については、やはり韓国の係数上昇が著しく、既に日本に匹敵するような高い(限界)資本係数を示している。さらに日本では、更新投資比率の傾向的上昇も顕著である。 - 投資率、資本係数、更新投資比率は、保証成長率を規定する重要な要因となるが、これらを比較したところ、70年代後半以降、日本の成長力が次第に低下していることが確認される。80年代後半は、資産インフレを伴った経済ブームに沸いたが、保証成長率は既に3.6%に低下していたことが明らかとなった。なお、韓国と台湾は共に高い成長力を有しているが、韓国は投資率自体が高いこと、台湾は資本係数が低い(資本の効率性が高い)ことが主たる要因であり、互いに異なった投資・成長パターンであることが示唆されている。
- 最後に、伸縮的加速度型投資関数をあてはめ各国比較を行なったところ、日本のストック調整速度は依然として高いこと、量的拡大志向もいまだに強くその結果「期待資本倍率」(企業にとっての最適資本係数/現実の資本係数)も高いことが確認された。
(1993年05月01日「調査月報」)
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竹中 平蔵
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