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- 米国経済の短期見通し
1989年06月01日
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I.予測の要約
予測の主な前提条件
- 農業生産
昨年の旱魃から正常に近い産出に戻ると仮定し、800億ドルの農業部門の実質国内生産を仮定。そのため、'88年第4四半期の生産が538億ドルより、実質GNPは第1四半期にこれだけで約2.5%(年率)、'89年全体で0.3%上がる。 - 石油価格
第1四半期の強気な市場も第2四期までで、その後は通常のパターン(―石油価格上昇―生産枠の無視―供給過剰―価格下落―産油国協調―供給削減―価格上昇―)に戻ると仮定。 - ドルレート
OECD諸国に対して、ファンダメンタルズから今年の第3四半期以降ドル安を想定。円、マルクそれぞれ'89年末に116円、1.685マルク、'90年末110円、1.622マルク、'91年末108円、1.582マルを想定。 - 財政、金融
ブッシュの公約に従い一切の増税なし。公定歩合は第2四半期後半に7.5%になり、'90年に入り前半7.0%そして後半6.5%を想定。 - 最低賃金
現在の3.35ドルから第3四半期に50セント増加、その後1年ごとに30セント増加。政府案とケネディ案の折衷を採用。
予測の要約
- 高金利の影響が実体経済に出はじめ、今年の夏以降米国経済は減速。今年の第4四半期から来年の第1四半期にかけて成長率(年率)は1%をきりグロースリセッションに入ると思われる。
- 今年の第2四半期以降、賃金率の上昇が5%を越えるようになり消費者物価も5%を越える。賃金―物価の緩かなスパイラルが始まる。
- 景気のスローダウンにもかかわらすインフレ鎮圧のため、連銀の引き締めは今年いっばい続くであろう。しかし、ドラスティックな財政削減策がとられないまま'90年に入り金融を緩め始めれば賃金、物価ともに5%を越えて上昇するだろう。
- 金利のピークは今年の第3四半期になろう。このとき、30年国債の利回りは9.75%-10.0%になろう。フェデラルファンドレートは‘89年末でも10%を越えていると思われる。
- '90年にドルの実質実効レートが4.6%下がり、経済成長率が1.5%に落ちても米国の貿易赤字、経常収支赤字はそれぞれ80億、40億ドル程度しか改善しない。
- ブッシュ大統領の公約通り増税をしないならば連邦政府の財政赤字は減少しない。今年の夏以降具体的な増税策の導入が考えられるであろう。'91年度の財政赤字削減に対して今年度のようなon-off-budgetゲームは通用しない。
(1989年06月01日「調査月報」)
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