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2026年01月23日
2026年の消費~緩やかな改善傾向のもとで進む「使い方」と「選び方」の変化
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1――マクロで見る個人消費の現在地~2026年も緩やかな改善傾向が続く
2026年の消費は、2024年からの緩やかな改善傾向が継続すると見られる。つまり、強い追い風が吹く年でも、明確な逆風に転じる年でもないが、これまで積み上げられてきた改善の効果が、徐々に家計に浸透していく年になると考えられる。
個人消費の水準を示す総務省「総消費動向指数」を見ると、直近2年間にわたり改善傾向が確認できる(図表1)。月次では足踏みする局面も見られるものの、水準としては2025年夏頃からコロナ禍前の水準を上回り、回復基調を維持している。消費の動向には、物価と賃金の状況が密接に関わる。ニッセイ基礎研究所では、消費者物価指数の上昇率は次第に鈍化し、2026年2月には2%を割り込むと予測している1。一方、名目賃金の上昇率が当面2%台前半で推移することで、これまでマイナス圏で推移してきた実質賃金は、2026年1-3月期から持続的・安定的にプラスに転じる見通しである。
日本経済全体としては内需を中心に緩やかな成長が続くとされており、民間最終消費支出についても、急回復ではないものの、プラス成長が続くとしている。
以上を踏まえると、2026年の家計は「一気に楽になる」年ではないものの、実質的な家計環境がじわじわと改善していく局面にあると位置づけられる。
ただし、この改善の実感には世帯属性による差がある点にも留意が必要である。正規雇用で共働きの世帯では可処分所得の改善を感じやすい一方、非正規雇用や単身世帯では、賃上げがあっても生活コストの上昇に吸収されてしまうケースも少なくない。
また、消費改善には「継続的」な可処分所得の増加が重要である。給付金など一時的な所得増加による効果は限定的であり、消費者が中長期的に可処分所得の増加を見通せるかどうかが、消費拡大の鍵を握る。その意味で、春闘におけるベースアップの動向は重要な注目点と言える。
1 斎藤太郎「2025~2027年度経済見通し-25年7-9月期GDP2次速報後改定」、ニッセイ基礎研究所、Weeklyエコノミスト・レター(2025/12/08)
2――「緩やかな改善」の中身~メリハリ消費は続く
2026年の個人消費は引き続き改善傾向をたどるものの、消費の総量が大きく変わるわけではない。このような中では、消費者が優先的に支出を振り向ける領域と節約する領域の切り分け(いわゆる「メリハリ消費」)、あるいは商品・サービスの選択の仕方や価値観の変化といった、消費行動の質的変化を捉える重要性が、これまで以上に高まっていると考えられる。
まず、消費者のメリハリ消費の現状を捉える。2026年は、物価上昇率こそ次第に鈍化していくものの、商品の価格が下がるわけではない。また、賃金が急激に上昇する局面でもない。そのため、生活必需品では引き続き節約志向が続く一方、娯楽や嗜好消費については「維持」2、あるいは余裕のあるときに限定的に拡大する。こうした消費行動が、2026年の基本的な姿として想定される。
実際に家計調査のデータを見ると、物価上昇の中で明確な「メリハリ」が確認できる。食料や日用品では節約志向が続く一方、娯楽関連の支出はおおむね維持されている(図表2)。また、支出の抑制傾向は単身世帯よりも二人以上世帯で顕著である。これは、二人以上世帯では住居費の割合が相対的に低く、家計全体の中で調整できる余地が大きいことが背景にあると考えられる。
まず、消費者のメリハリ消費の現状を捉える。2026年は、物価上昇率こそ次第に鈍化していくものの、商品の価格が下がるわけではない。また、賃金が急激に上昇する局面でもない。そのため、生活必需品では引き続き節約志向が続く一方、娯楽や嗜好消費については「維持」2、あるいは余裕のあるときに限定的に拡大する。こうした消費行動が、2026年の基本的な姿として想定される。
実際に家計調査のデータを見ると、物価上昇の中で明確な「メリハリ」が確認できる。食料や日用品では節約志向が続く一方、娯楽関連の支出はおおむね維持されている(図表2)。また、支出の抑制傾向は単身世帯よりも二人以上世帯で顕著である。これは、二人以上世帯では住居費の割合が相対的に低く、家計全体の中で調整できる余地が大きいことが背景にあると考えられる。
2 久我尚子「家計消費の動向(二人以上世帯:~2025年11月)-実質賃金マイナス下でも底堅い消費、「メリハリ消費」が定着」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート(2026/01/15)
3――消費行動の質的変化~AI時代の「選ばない消費」が示す意思決定の変化
前述の通り、消費の総量が大きくは変わらない中では、消費の使途に加え、消費行動の質的変化を捉えることが重要である。
特に2026年の消費を展望する上では、二つの変化に注目したい。一つは、足元で急速に浸透しつつあるAI活用に見られる「選ばない消費」の広がりである。もう一つは、二次流通が購買行動の土台となる中で現れつつあるモノの選び方の多様化である。
以下では、まずAI時代の「選ばない消費」について、生成AIの利用実態を確認した上で、その背景と意味を整理する。その後、モノの選び方の変化について論じる。
特に2026年の消費を展望する上では、二つの変化に注目したい。一つは、足元で急速に浸透しつつあるAI活用に見られる「選ばない消費」の広がりである。もう一つは、二次流通が購買行動の土台となる中で現れつつあるモノの選び方の多様化である。
以下では、まずAI時代の「選ばない消費」について、生成AIの利用実態を確認した上で、その背景と意味を整理する。その後、モノの選び方の変化について論じる。
1|AI利用の急速な浸透~技術の進展としてだけでなく、消費行動の変化として捉える
消費者の生成AI利用は、2025年に入ってから急速に浸透した。株式会社サイバーエージェント「生成AIのユーザー利用実態調査」によると、日常の検索行動における生成AIの利用率は、2025年10月時点で31.1%に達している(図表3)。検索エンジンやSNSとの差はなお残るものの、同年5月時点の21.3%から、わずか5か月間で約1.5倍に伸長している。こうした伸びを踏まえると、2026年1月時点では4割に近い水準に達している可能性も考えられる。
年代別に見ると、いずれの年代でも検索エンジンの利用が最も多いものの、若い年代ほどSNSや生成AIの利用割合が高い。特に10代では、日常の検索行動に生成AIを利用する割合が64.1%に達している(図表4)。また、10代や20代では、検索エンジンよりもSNSの利用割合がやや上回っている点も興味深い。
同調査では、生成AIの利用用途として、単なる「情報収集」よりも、「比較検討」のフェーズでの利用がやや多いことも示されている。これは情報を集める段階というよりも、情報を整理し、選択肢を絞り込み、意思決定を行う段階において、生成AIの要約・比較機能が活用されていることを意味している。
消費者の生成AI利用は、2025年に入ってから急速に浸透した。株式会社サイバーエージェント「生成AIのユーザー利用実態調査」によると、日常の検索行動における生成AIの利用率は、2025年10月時点で31.1%に達している(図表3)。検索エンジンやSNSとの差はなお残るものの、同年5月時点の21.3%から、わずか5か月間で約1.5倍に伸長している。こうした伸びを踏まえると、2026年1月時点では4割に近い水準に達している可能性も考えられる。
年代別に見ると、いずれの年代でも検索エンジンの利用が最も多いものの、若い年代ほどSNSや生成AIの利用割合が高い。特に10代では、日常の検索行動に生成AIを利用する割合が64.1%に達している(図表4)。また、10代や20代では、検索エンジンよりもSNSの利用割合がやや上回っている点も興味深い。
同調査では、生成AIの利用用途として、単なる「情報収集」よりも、「比較検討」のフェーズでの利用がやや多いことも示されている。これは情報を集める段階というよりも、情報を整理し、選択肢を絞り込み、意思決定を行う段階において、生成AIの要約・比較機能が活用されていることを意味している。
年代別の違いを踏まえると、若い世代では、検索エンジンを用いて「自分で探す」行動から、SNSや生成AIを通じて「提示されたものから選ぶ」「判断を補助してもらう」行動へのシフトが相対的に顕著であると言えるだろう。
このようにAIの使われ方を見ていると、これは単なる技術の進展というよりも、私たちの選び方そのもの、すなわち消費行動の質が変わり始めていることを示しているように考えられる。
このようにAIの使われ方を見ていると、これは単なる技術の進展というよりも、私たちの選び方そのもの、すなわち消費行動の質が変わり始めていることを示しているように考えられる。
2|AI時代の「選ばない消費」~消費者は「選ばせられる」よりも、「自然に最適解を受け取りたい」
ここで、「選ばない消費」という現象について整理したい。「選ばない消費」についてはこれまでも述べてきたが3、サブスクリプションやレコメンド購入、ネットスーパーにおける「いつもの」機能(過去の購買履歴に基づき、定番商品を自動的に提案・選択できる仕組み)、AI・アルゴリズムによる自動提案など、消費者が自ら細かな選択を行わなくても済む仕組みを活用する消費行動全般を指している。
重要なのは、「選ばない=思考停止」ではないという点である。これは、情報過多や選択疲れといった環境変化への適応であり、限られた時間や認知資源を有効に使うための合理的な行動と捉えることができる。
「選ばない消費」が生まれた背景には、以下の要因が挙げられる。
もっとも、消費者はすべての選択を他者やシステムに任せたいわけではない。たとえば、20代(1都3県在住)を対象とした調査を見ると、ジャンルによって選び方の違いが明確に表れている。ファッションや美容といった分野では、「迷いやすく、後悔したくない」ことから推奨や提案に依存する傾向がみられる一方で、推し活やスキルアップといった分野では、「自分で選びたい」「能動的に探索したい」という意識が相対的に強い。
つまり、AI時代の「選ばない消費」とは、すべてを自分で選ばないことではなく、選ぶ・選ばないをジャンルや場面ごとに使い分ける消費行動である。
こうした「選ばない消費」の広がりは、消費者と企業の関係にも変化をもたらしている。消費者にとって重要なのは、選ぶ手間が減り、ストレスなく価値を受け取れることである。その結果、「選ばせられる」よりも、「自然に最適解が提示される」ようなサービス体験への期待が高まっている。
AIやデータ活用によって、消費者の好みやライフスタイルを精緻に把握することが可能になり、一人ひとりに合わせたパーソナライゼーションが進んでいる。こうした中では、選択に対する信頼感が、消費者がサービスや企業を選ぶ際の重要な判断軸となりつつある。
一方で、効率性だけが重視されているわけではない。消費者は、「このサービスは自分に合ったものを提案してくれるから、もう自分であれこれ選ばなくていい」という合理性や効率の良さを評価する一方で、セレンディピティ(偶然の発見)も期待している。すべてをアルゴリズムに委ねると、自分の好みに閉じ込められる「フィルターバブル」に陥るリスクもある。
そのため、企業やサービスには、消費者に「選ばずに済む安心感」を提供しつつ、予想外の出会いを許容する余地を残すことが求められる。よりパーソナライズされた価値を打ち出しながらも、選択の幅を完全には閉じない設計が重要となる。
2025年に急速に浸透したAIは、2026年には日常の中で当たり前に使われる段階に進むと考えられる。ここで言うAI利用とは、生成AIアプリの利用にとどまらず、ECサイトのレコメンド機能やサブスクリプションサービス、ネットスーパーの「いつもの」機能など、AIやアルゴリズムが背後で動く「選ばなくて済む仕組み」全般を指している。
2026年は、「選ばない消費」と「選び直す消費」が共存し、消費者が「どう選ぶか」をより意識的に使い分ける年になると考える。日用品や定番品はAIに任せて効率化する一方で、高額品やこだわりのある消費では、自分なりの基準で時間をかけて選び直す。AIの浸透は、消費を単純化する一方で、人が考える余地をより鮮明にするとも言えそうだ。
3 久我尚子「若者消費の現在地(2)選択肢があふれる時代の「選ばない消費」~データで読み解く20代の消費行動」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート(2025/09/29)
ここで、「選ばない消費」という現象について整理したい。「選ばない消費」についてはこれまでも述べてきたが3、サブスクリプションやレコメンド購入、ネットスーパーにおける「いつもの」機能(過去の購買履歴に基づき、定番商品を自動的に提案・選択できる仕組み)、AI・アルゴリズムによる自動提案など、消費者が自ら細かな選択を行わなくても済む仕組みを活用する消費行動全般を指している。
重要なのは、「選ばない=思考停止」ではないという点である。これは、情報過多や選択疲れといった環境変化への適応であり、限られた時間や認知資源を有効に使うための合理的な行動と捉えることができる。
「選ばない消費」が生まれた背景には、以下の要因が挙げられる。
- モノや情報、選択肢が過剰に増えたこと
- 選ぶこと自体に時間や精神的負担といったコストが伴うようになったこと
- デフレ・成熟社会の中で「失敗したくない」「後悔したくない」という意識が強まったこと
- AIやデジタル技術によって、選択を委ねる「任せ先」が用意されたこと
もっとも、消費者はすべての選択を他者やシステムに任せたいわけではない。たとえば、20代(1都3県在住)を対象とした調査を見ると、ジャンルによって選び方の違いが明確に表れている。ファッションや美容といった分野では、「迷いやすく、後悔したくない」ことから推奨や提案に依存する傾向がみられる一方で、推し活やスキルアップといった分野では、「自分で選びたい」「能動的に探索したい」という意識が相対的に強い。
つまり、AI時代の「選ばない消費」とは、すべてを自分で選ばないことではなく、選ぶ・選ばないをジャンルや場面ごとに使い分ける消費行動である。
こうした「選ばない消費」の広がりは、消費者と企業の関係にも変化をもたらしている。消費者にとって重要なのは、選ぶ手間が減り、ストレスなく価値を受け取れることである。その結果、「選ばせられる」よりも、「自然に最適解が提示される」ようなサービス体験への期待が高まっている。
AIやデータ活用によって、消費者の好みやライフスタイルを精緻に把握することが可能になり、一人ひとりに合わせたパーソナライゼーションが進んでいる。こうした中では、選択に対する信頼感が、消費者がサービスや企業を選ぶ際の重要な判断軸となりつつある。
一方で、効率性だけが重視されているわけではない。消費者は、「このサービスは自分に合ったものを提案してくれるから、もう自分であれこれ選ばなくていい」という合理性や効率の良さを評価する一方で、セレンディピティ(偶然の発見)も期待している。すべてをアルゴリズムに委ねると、自分の好みに閉じ込められる「フィルターバブル」に陥るリスクもある。
そのため、企業やサービスには、消費者に「選ばずに済む安心感」を提供しつつ、予想外の出会いを許容する余地を残すことが求められる。よりパーソナライズされた価値を打ち出しながらも、選択の幅を完全には閉じない設計が重要となる。
2025年に急速に浸透したAIは、2026年には日常の中で当たり前に使われる段階に進むと考えられる。ここで言うAI利用とは、生成AIアプリの利用にとどまらず、ECサイトのレコメンド機能やサブスクリプションサービス、ネットスーパーの「いつもの」機能など、AIやアルゴリズムが背後で動く「選ばなくて済む仕組み」全般を指している。
2026年は、「選ばない消費」と「選び直す消費」が共存し、消費者が「どう選ぶか」をより意識的に使い分ける年になると考える。日用品や定番品はAIに任せて効率化する一方で、高額品やこだわりのある消費では、自分なりの基準で時間をかけて選び直す。AIの浸透は、消費を単純化する一方で、人が考える余地をより鮮明にするとも言えそうだ。
3 久我尚子「若者消費の現在地(2)選択肢があふれる時代の「選ばない消費」~データで読み解く20代の消費行動」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート(2025/09/29)
(2026年01月23日「基礎研レポート」)
03-3512-1878
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