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関東甲信地方は平年より10日早い5月29日に梅雨入りとなりました。6月上旬は晴れの日が続いて空梅雨の様相でしたが、一転して6月中旬以降は梅雨時期らしいどんよりした曇りや雨の日となっています。長いこと雨の日が続くと、気分が落ち込みがちになることもよくあります。
ところで近年、経済学に心理学的手法を導入した行動経済学分野が発展し、これを金融分野に応用した行動ファイナンスの研究が盛んに行われています。また心理学では「天気がよい晴れの日のほうが幸福感や満足感を高く感じる」ということが、実証実験により示されています。このような関係が、投資の世界についても言えるか、今回は天気と投資の関係について分析してみました。
分析に際して、株式市場全体の株価を表わす代表的な指数であるTOPIXの1993年~2012年の20年間の日次収益率(注1)を使い、その日の天気(注2)の分類に従って、平均日次収益率を計算しました。天気の分類は「晴れ」・「曇り」・「雨・雪」の3分類とし、分析期間は20年及び10年ごとに分けています。
驚くべきことに、分析期間それぞれで晴れの日の収益率が高く、雨・雪の日の収益率が低くなっています。さらに雨・雪の日の収益率は統計的検定(注3)において有意に負であることが確認されました。心理学の実証実験と同様に、天気によって投資家の心理に影響を与え、その結果として収益率に差が出たものと考えられます。
さらに、こうした天気による投資家の心理の変化が日本市場の取引時間中に生じているか、日次収益率を日中収益率(注4)と夜間収益率(注5)に分けて分析してみました。日中収益率をみると、雨・雪の収益率が一番低く、雨・雪の日の日次収益率のほとんどの要因を占め、雨・雪による投資家の心理の悪化は日本市場の取引時間中に生じて収益率が悪化していると考えられます。
このように天気は投資家の心理の変化を通じて、株価収益率の差として現れることが確認できました。仮に天気と株価収益率の関係が今後も続くならば、天気予報に基づいた投資手法の開発も面白いかもしれません。
伊藤 拓之
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