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中高年男性の社会的孤立について

2010/11/24

土堤内 昭雄

社会研究部門
電話番号:03-3512-1794
e-mail:doteuchi@nli-research.co.jp

ニッセイ基礎研REPORT(冊子版)2010年12月号

全文ダウンロード(313KB)

■目次

はじめに〜中高年男性クライシスとは
1--------中高年男性の健康格差:メンタルヘルス問題
2--------中高年男性の雇用格差:失業・無業問題
3--------中高年男性の結婚格差:生涯未婚と熟年離婚問題
4--------中高年男性クライシスの発生と回避策
おわりに〜格差社会の是正に向けて

■introduction

社会の自己責任論や企業の成果主義など、現代社会は様々なリスクを個人が負わなければならない時代へと向かっている。これまでは終身雇用制の企業と性別役割分業の核家族が雇用、医療、教育、育児、介護といった生活保障機能の多くを担い、われわれは企業に帰属することにより家族も含め人生の多くの生活リスクを回避してきたのである。特に、中高年男性は企業社会で滅私奉公的に働いてさえいれば定年退職まで安定した暮らしが確保できたが、年功序列や終身雇用制の崩壊、非正規雇用
の増加により今日では会社の傘に入ることも難しくなっている。その結果、強いストレス社会の中で肉体的・精神的健康を喪失し、メンタルヘルス問題から失業・無業状態に陥る中高年男性も多い。また、近年では男性の非正規雇用の増加による生涯未婚率(50歳時点で一度も結婚したことがない人の割合)の上昇や、リストラが家庭崩壊、熟年離婚に繋がるケースなど中高年男性の「一人暮らし」が急速に拡がっている。このように中高年男性が企業と家族というシェルターを失い、社会的な孤立に追い込まれるという中高年男性クライシスが現実のこととなっている。
日本では98年以降、12年間連続で年間自殺者が3万人を超え、日常的に新聞紙上で見かける交通事故による死者数が年間5千人まで減少している現状とは対照的だ。日本の自殺者を性・年代別にみると50代男性を中心に60代男性、40代男性が多いことが中高年男性クライシスの一端を象徴的に物語っている。自殺動機は一般的には
「健康問題」が多いものの、40代および50代男性で「経済・生活」問題が最も多い。そして職業別の状況は、「無職者」が最も多く、次いで「被雇用者・勤め人」となっている。また、配偶関係別の自殺死亡率(人口10万人当たり)では特に離別者の死亡率が高い。
このような中高年男性自殺者が多い背景には、メンタルヘルス問題、失業・無業問題、生涯未婚・熟年離婚問題という健康格差、雇用格差、結婚格差がもたらす中高年男性の社会的孤立の現状があるように思われる。本稿では、増加する中高年男性の「ひとり社会」におけるリスクの背景を明らかにし、中高年男性自殺者の水面下に見え隠れしている中高年男性クライシスの状況とその回避策について考えてみたい。

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