2015年12月01日

日本の生命保険業績動向 ざっくり30年史(2)新契約高・保有契約高-90年代ピークを過ぎた保険業績がまた新たな復調へ向かう?

保険研究部 主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任 安井 義浩

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今回は、保険引受の実績をあらわす新契約高・保険契約高といったところを、保険種類別(個人保険、個人年金保険、団体保険、団体年金保険)に概観してみる。
 

1――個人保険

【個人保険 新契約高(1979~2014)】
個人保険の新契約高は、1980年代には順調に伸びてきたが、1991年度をピークとして減少基調になった。その後、バブルの崩壊、市中金利の低下など資産運用環境の悪化により、いくつかの生命保険会社が破綻し、そこから引き起こされた生保不信もあって下り坂をたどる。

また、当時は純粋な新規契約だけではなく、転換による純増加(自社の保険を「下取り」して更に高額の保険に切り替えたときの、増加した保険金額)も相当の構成比をもっていることがわかる。これが2005年度頃からほとんどなくなっている。

契約の転換制度それ自体は1976年から始まったものであり、それまで加入していた保険契約の積立金を活用し、また配当などの法的な権利を引き継いだまま保障を充実できる利便性をもった制度であった。そこで1990年代までは盛んに利用されていたのである。ところがそれ以降、新契約の予定利率が引き下げられる時期に、この転換制度が使われると、問題があることが指摘されるようになった。会社にとっては、当時始まっていた逆ざや問題の解消効果がある一方で、顧客側からすれば、「充分な説明もなく、利回りを引き下げられる不利益」があることである。当時の行政当局からも、転換時には、有利・不利な点や、単純な追加新契約との比較情報などにつき、充分な顧客説明をするようにとの指導が、何度かなされたようである。

またそれ以前から、新契約自体が減少していて、転換される対象契約も減少してきたことや、追加加入したほうがいい新商品・制度がでてきたことなどもあって転換は減少し、現在では制度としてはあるものの、業績を押し上げるほどの規模はなくなっている。

2010年度以降の新契約高は、景気回復などにより、ほぼ横ばいではあるが回復基調にありそうにみえるが、果たして今後はどうなるだろうか。
【個人保険 保有契約高(1979~2014)】
次に、個人保険の保有契約高についてみてみる。

個人保険の保有契約高は1996年度がピークで、その後は減少傾向となった。先に述べた新契約の減少と、当時の日本経済の厳しい状況、それを背景とした生保破綻への不安などから解約・失効契約が増加したことによるものである。この数年はどうにか反転の兆しがみえている。

ところで、こうした新契約高や保有契約高が、例えば「死亡保険金1,000万円」といった金額の積み上げで表されているのに対し、近年増加傾向にある医療保障保険などいわゆる第3分野1は、例えば「入院日額5,000円」といった金額で表示されることが多く、単純に合算できない。

それについては、収入される保険料でみることにすると、どちらも例えば「年間10万円」のように表示を統一できる。これが、2004年度から開示されている「保有(あるいは新契約)年換算保険料」であり、そのトレンドは、下のグラフのようになっている。
【年換算保険料でみた保有契約(2005~2014)】
従来の保有契約高のグラフでは、2005年度以降も明らかな減少傾向にみえるが、年換算保険料でみると、わずかながら増加傾向にある。第3分野も着実に増加しており、実質的な保有契約高の復調に寄与している。
 
 
1 人の生死に係るような終身保険、定期保険など生命保険を第1分野、自動車保険や火災保険などの損害保険を第2分野というのに続き、医療保険、介護保険など、その中間でどちらともいえないものを第3分野という。現在は生命保険会社、損害保険会社両方で扱える。
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保険研究部   主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任

安井 義浩 (やすい よしひろ)

研究・専門分野
保険会計・計理、共済計理人・コンサルティング業務

経歴
  • 【職歴】
     1987年 日本生命保険相互会社入社
     ・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
     2012年 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
     ・日本アクチュアリー会 正会員
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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