2015年06月29日

資金循環統計(15年1-3月期)~個人金融資産は初の1700兆円超え、前年比では+85兆円の大幅増

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■見出し

・個人金融資産(15年3月末): 前期比では11兆円増
・資金流出入の詳細: 投資信託への資金流入が進む
・その他注目点: 企業の現預金はさらに増加、日銀の国債保有高が預金取扱機関に肉薄

■要旨

2015年3月末の個人金融資産残高は、前年比85兆円(5.2%)増の1708兆円となった 。残高は初めて1700兆円台に乗せ、過去最高を更新した。年間で資金の流入超過が31兆円あったのに加え、円安・株高基調を受けて時価 が53兆円増加したことで残高が大きく押し上げられた。年度での残高増加は6年連続となる。四半期ベースでは、前期末(14年12月末)比で11兆円の増加となった。例年1-3月期は一般的な賞与支給月を含まないことからフローで流出超過となる傾向があり、今回も3兆円の流出超過となった。ただし、1-3月期には、大幅な株高が進んだため、時価が15兆円増加し、残高の増加に繋がった。

1-3月期の個人金融資産への資金流出入について詳細を見ると、例年同様、現預金からの資金流出が顕著であるが、その規模は前年を2兆円余り下回っている。前年の1-3月期は消費税率引き上げ前の駆け込み需要で、現預金の取り崩しが進みやすかったため、その反動が出た形とみられる。リスク性資産については、株式・出資金は1兆円強減少したが、投資信託への資金流入(3.4兆円)は例年同時期を大きく上回る規模となった。株と投資信託に外貨預金や対外証券投資などを加えたリスク性資産の残高は298兆円、その個人金融資産に占める割合は17.5%と、それぞれ2007年6月末のピークに接近している。

国庫短期証券を含む国債の3月末残高は1038兆円と12月末から17兆円増加し、過去最高を更新した。国債の保有状況を見ると、従来同様、最大の保有主体である預金取扱機関(銀行など)の保有高(286兆円)が減少(12月末比12兆円減)する一方で、異次元緩和で国債の大量買入れを継続している日銀の保有高(275兆円)が増加(12月末比19兆円増)、両者の差は11兆円にまで縮小している。全体に占める日銀の保有シェアも26.5%(12月末は25.1%)に上昇。日銀は今後も異次元緩和を継続するため、次回発表の6月末時点では、日銀の保有高が預金取扱機関を上回る可能性が高い。

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

(2015年06月29日「経済・金融フラッシュ」)

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