2018年03月05日

平成30年度税制改正について

保険研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任   安井 義浩

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平成30年度与党税制改正大綱が、昨年12月14日に公表され、同月22日に閣議決定された。今回の改正は、もともと大きな動きがないのではないかといわれていたことに加え、ある意味突然の衆議院解散(9月)・選挙(10月)があり、時期的に税制改正の議論の時間が充分なかったのではないかとも思われる。大きくみれば安倍内閣が信任を勝ち得た格好になったので、個人所得課税など昨年度から見直しに向けた方向性が出されていたものは、それを踏まえ、引き続き議論がなされた。

その最も話題の中心となった個人所得課税については、現在の控除額が縮小されることになった。これにより、年収850万円以上の230万人が増税となるとのことである。公的年金・企業年金に関係する事項としては、控除額の縮小、という意味では似たような話であるが、公的年金等控除の引下げ(増税)がなされる予定である。その主旨は、給与所得控除・公的年金控除の引下げ、基礎控除の引き上げという方針のもと、現時点では公的年金控除が高所得の年金所得者にとって手厚い仕組であるのが現状であること、また諸外国では拠出・給付それぞれの段階において、基本的に課税される仕組である一方、わが国においては拠出段階では社会保険料等控除、給付段階では公的年金等控除が受けられ、充分な課税がなされない仕組であることを踏まえ、さらに世代内・世代間の公平性を確保する、ということである。

ざっくり言えば、この改正により、課税対象の所得について、公的年金等収入以外の所得金額が1,000万円未満の場合には10万円アップ、1,000万円~2,000万円の場合20万円アップ、2,000万円以上の場合30万円アップとなる。また控除額には上限(195.5万円)が設けられることとなった。報道によれば、この改正により年金収入だけ、あるいは不動産収入なども含めて1,000万円以上ある人20万人が増税となる、とのことである。
ただし、これらの実施時期は「2020年分以後の所得税及び2021年度分以後の個人住民税について適用する。」ということで、まだ先の話であり、逆に言うと忘れたころに増税される(会社員が実感するのは、2020年12月の年末調整だとすれば、約3年後?)ということになりそうである。

その他のトピックスとしては、
  たばこ税の引き上げ
  (2018、2020、2021の3段階にわたり、一本あたり1円ずつ計3円増)
  国際観光旅客税(いわゆる出国税)の創設
  (2019.1.7以降の出国1人1回1,000円)
  森林環境税の創設(2024年度より~、個人住民税に併せて1,000円)
などがあげられようか。

このように、どれもがすぐに増税されるというわけではないが、報道によれば、全ての改正が実現した場合には年間約2,800億円の増税になるとのことである。今回のような選挙直後の税制改正においては、次の選挙への影響をさほど気にしなくてよいとの雰囲気により、増税傾向となることが多いようであるが、まさにそうした時期にあたったものともいえる。

年金課税については、与党税制改正大綱の最後に示される中長期的な検討事項の中で、毎年、真っ先に今後の検討を宣言されており、重要な課題と位置づけられていることがわかる。今回も以下のように記載された。これまでと違うのは今般の公的年金控除の見直しとの整合性に留意するとされた部分である。

 第三 検討事項
  1 年金課税については、少子高齢化が進展し、年金受給者が増大する中で、世代間
     及び世代内の公平性の確保や、老後を保障する公的年金、公的年金を補完する
           企業年金を始めとした各種年金制度間のバランス、貯蓄商品に対する課税との
           関連、給与課税等とのバランス等に留意するとともに、今般の公的年金等控除の
           見直しの考え方や年金制度改革の方向性も踏まえつつ、拠出・運用・給付を
           通じて課税のあり方を総合的に検討する。

特別法人税については、昨年の大綱で平成31年までの凍結が決まっていることもあって、今すぐに決める必要がない年柄であった。そのため特段議論もなかったようで、ほぼ全ての関係者が要望するような「撤廃」とはならなかった。

さて、こうした税制改正をもひとつの前提として含む平成30年度予算は、97兆7,128億円(前年度当初予算比+2,581億円)で、国会に提出されている。税収が約59兆円と前年度より1.3兆円増加する見通しであることもあって、公債金は0.6兆円減少の33.6兆円で済むという、歳入の内訳となっている。また歳出のほうでは、社会保障関係費が32.9兆円(+1.5%)、防衛関係費5.1兆円(+1.3%)と増加する一方、国債費は、金利低下による利払い費の減により、23.3兆円(マイナス1%)と減少する計画となっている。引き続き、年金・医療といった社会保障関係費の増加と、それをなんとか抑えるような政策や税制の検討が続きそうである。

年金税制の周辺の話題として、NISA(少額投資非課税制度)の動きにふれておこう。2018年からは、従来のNISAに加え、つみたてNISAが開始されている(といっても選択制だが)。これは従来のNISAよりも年間投資枠は小さい(40万円)が、長期(20年間)にわたり運用益が非課税となる仕組で、運用対象も長期で手数料が低く、分散投資に適した投資信託に限定されているものである(一般のNISAは年120万円で5年間)。また、個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)も、2017年から主婦や公務員なども加入できるようになって、1年がたつ。加入者が、2017年12月末で74万人を突破した(国民年金基金連合会による)とのことで、2016年12月には30万人だったことを思えば、順調に拡大している。この両者を扱う金融機関は、PRに忙しいところだが、今は、より新しいつみたてNISAのほうにかまって?いて、そのためにiDeCoの増加傾向が少し頭打ちであるという話もある。それにしても、この2つが、老後資金も含めた資産形成に、今最も注目されている手段であることは間違いないだろう。
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保険研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任

安井 義浩 (やすい よしひろ)

研究・専門分野
保険会計・計理、共済計理人・コンサルティング業務

(2018年03月05日「ニッセイ年金ストラテジー」)

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