2016年12月20日

なぜ韓国では最低賃金を守らない企業が多いのか?―韓国の最低賃金の未満率は11.5%で日本の約6倍―

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中

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■要旨
 
  • 2016年8月に告示された韓国の2017年の最低賃金は6,470ウォンで今年の6,030ウォンに比べて7.3%も引き上げられた。
     
  • 最低賃金の引き上げ率が高いことなどを原因として、韓国では最低賃金を守っていない企業が多く、最低賃金未満の時給で働いている労働者の割合は2002年の4.9%から継続的に上昇傾向にあり、2015年には11.5%に達している。
     
  • 韓国における未満率が高い理由としては、(1)最近の景気低迷により大幅な最低賃金の引き上げに対応できない中小・零細企業が増えていることや(2)最低賃金を支給していない企業に対する摘発・監督や処罰が適正に行われていないことなどが考えられる。
     
  • 最低賃金制度に違反した企業は3年以下の懲役や2000万ウォン以下の罰金刑に処されることになっているものの、企業が「是正命令」を遵守し、滞納していた賃金を労働者に支払えば、今まで最低賃金制度に違反したことに対する何の処罰も受けずに継続的に企業活動をすることができる。
     
  • 労働者の生活の質を向上させるために最低賃金を引き上げることも大事であるが、法律で決まっている最低賃金を守るようにすることが何より重要である。そこで、最低賃金制度の実効性を高めるためには、日本が実施している地域別最低賃金や特定(産業別)最低賃金の導入を中長期的に考える必要性があるかも知れない。

■目次

1――はじめに
2――最低賃金や未満率の現状
3――結びに代えて=なぜ最低賃金は守られないのか
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生活研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
労働経済学、社会保障論、日・韓における社会政策や経済の比較分析

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