2016年09月07日

強まる経済の不透明感。オフィスビル市場は活況も、「爆買い」終了で外国人消費は縮小-不動産クォータリー・レビュー2016年第2四半期

基礎研REPORT(冊子版) 2016年9月号

金融研究部 不動産市場調査室長   竹内 一雅

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2016年4-6月は、熊本地震の発生に加え、円高・株安の進展など、経済の先行きへの不透明感が強まった四半期だった。低金利などにより住宅着工戸数は年率100万戸台に増加するなど活況が続くが、首都圏マンション発売戸数や契約率は低下傾向が継続。オフィス市場は空室率の改善が続くが、成約賃料は上昇が頭打ちとなっている。最近の百貨店販売を支えてきた外国人旅行者による免税品売上高が円高や中国の関税制度見直しなどから前年比で大幅減。東証REIT指数は英国のEU離脱決定の影響などから下落したが、年初来上昇率は東証株価指数を大きくアウトパフォームしている。

1――経済動向

2016年4-6月は、甚大な被害をもたらした熊本地震の発生に加え、円高・株安と新興国を中心とした世界経済の減速、企業収益の悪化、さらには英国のEU離脱決定などがあり、経済の不透明感が強まった四半期だった。

こうした状況で、消費税の10%への引き上げ時期の再延期が発表された。消費増税の延期により、増税前の駆け込み需要がなくなる一方、その反動減も当面発生しないこととなった[図表1]。
実質GDP成長率の見通し

2――住宅着工と住宅販売市場

住宅着工戸数は低金利や相続税対策に伴うアパート等の貸家着工の増加に支えられて大きく増加し、5月と6月には年率換算で100万戸を上回った。活発な住宅着工の一方、2016年上半期の首都圏の分譲マンションの発売戸数は1992年以来24年ぶりの低水準と低迷が続いている。発売戸数の減少にもかかわらず、首都圏マンション価格の上昇などから契約率は低下傾向にある。その中で高額物件の販売は好調で、高い契約率が達成されている[図表2]。
首都圏マンション価格別発売・契約戸数と契約率(2016年4~6月)

3――不動産サブセクターの動向

1│オフィス 
2016年前半に東京都心部では、JR新宿ミライナタワーをはじめとする大規模ビルの新規供給があり、新築大規模ビルへの需要の強さからこれらのビルでは8割以上の稼動となった。

三幸エステートによると、2016年第2四半期の東京都心Aクラスビルの空室率は2.6%、と、ほぼ空室がない状況にある[図表3]。空室率の低下が続く一方、成約賃料(オフィスレント・インデックス)は、Aクラスビルで前期比▲6.9%と上昇が頭打ちとなっている。

2017年の都区部大規模ビルの供給量は最近では2013年に次ぐ低い水準であるため、オフィス空室率の低下傾向は、当面継続すると考えられる。とはいえ、都心部の新築大規模ビルへの移転では、一人当たり面積を縮小させる動きが一般化しており、高額な賃料負担力を持つ企業の移転が一巡傾向にあることなどから、今後の市況の改善動向には注意が必要だろう。

2│賃貸マンション 
主要都市の賃貸マンションの賃料は概ね上昇基調にあるが、タスによると、貸家着工の急増から首都圏では賃貸住宅アパート(木造、軽量鉄骨造)の空室率が急上昇し、すでに30%を上回っているという。今後も低金利と相続税対策に基づく貸家着工の活況は続くと思われるため、需給緩和傾向は継続する可能性が高い。

3│商業施設・ホテル・物流施設 
2016年4-6月期の小売販売額(既存店)は、スーパーで微減、コンビニで増加した一方、百貨店では▲4.0%の減少だった。最近の百貨店販売の活況を支えてきた外国人の「爆買い」は、円高・元安や中国の個人持込み荷物等の関税制度の見直し、購買品目の消耗品等への変化による購買単価の下落などから、免税品売上高が前年比▲15%の大幅減となった[図表4]。百貨店では、売上高の95%以上を占める国内客も、株価低迷、熊本地震などによる消費マインド低下から購買の不調が続いており、急回復は厳しい状況にあるようだ。

2016年4-6月の訪日外国人旅行者数は前年比+19.0%の596万人だった。円高や熊本地震などの影響もあり、前年比増加率は2015年4-6月の+48.0%と比べると増加ペースは縮小したが、全国のホテル客室稼働率は昨年とほぼ同程度での高い水準で推移している。

宿泊旅行統計によると、2016年4-6月の延べ宿泊者数は1億1,660万人で、前年比▲164万人(▲1.4%)の減少となった[図表5]。日本人宿泊者数が熊本地震の影響などから前年比で▲3.1%の大幅減になったためだが、外国人の延べ宿泊客者数の伸びも前年比+8.6%と昨年に比べると増加率が大きく縮小している。

物流施設については、首都圏、大阪圏の両地域において、2016年から2018年にかけて、過去最大規模の新規供給が計画されている[図表6]。新規供給の増加に伴い空室率は上昇傾向にあるが、首都圏では高水準の需要があるため今後は、通販等の施設需要の拡大により、新規供給床はしだいに埋められていくことになろう。
東京都心Aクラスビルの空室率と成約賃料(オフィスレント・インデックス)/百貨店での外国人旅行客による免税品売上高および前年比増加率/国内宿泊施設における延べ宿泊者数増加数(前年同期比)/主要物流施設における需給動向・見通し<首都圏>

4――J-REIT(不動産投信)・不動産投資市場

2016年第2四半期の東証REIT指数(配当除き)は、英国のEU離脱決定を受けて投資家がリスク回避姿勢を強めたことなどから3月末比▲2.8%下落した。ただし、東証REIT指数の年初来の上昇率は+5.5%とプラスを維持し、▲19.5%下落のTOPIX(東証株価指数)に対して大幅にアウトパフォームしている。

引き続き物件の取得環境は厳しいものの、J-REITの外部成長ペースは昨年と同水準を維持している。また、4月にスターアジア不動産投資法人が運用資産615億円で新規上場し、銘柄数は54社に増加した。第3四半期は2社が新規上場する一方、REIT同士の合併により2社が消滅する予定である。

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金融研究部   不動産市場調査室長

竹内 一雅 (たけうち かずまさ)

研究・専門分野
不動産市場・投資分析

(2016年09月07日「基礎研REPORT(冊子版)」)

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